各種の病気や障害を乗り越えて家庭や社会に復帰し、自立するためにはリハビリ専門医や看護師だけでなく多くのリハビリ専門職が必要です。
その役割を1日の暮らしに対応させて説明してみます。私たちが目覚めると、まず布団から起きあがり、立ってトイレなどに歩いていきます。脳卒中による片まひなどではそれが困難になりますが、これらの基本動作や筋力増強訓練を行うのが理学療法士(PT)です。リウマチや変形性関節症ではひざや腰の関節のこわばりや痛みが大きな問題であり、関節可動域訓練や物理療法、マッサージなども大切な仕事です。
さて、つぎは顔を洗ったり、トイレに行ったり、また入浴や着替え、炊事、仕事などの実際的な応用動作が必要になります。そのためには具体的な日常生活動作訓練のほかに、ものを握る、つまむなどの手先の細かな訓練も必要です。それを訓練するのが「作業療法士(OT)」で、陶芸やビーズ編み、調理、木工など、作品を作って、趣味を楽しみながら、訓練も行います。
また、家族や友人との会話や意思伝達など、言葉にかんする訓練をするのが「聴覚言語療法士(ST)」です。失語症では繰り返して発語や口の形の練習、文字や絵カード、ジェスチャーなど多くの刺激を使って根気強く訓練します。舌や唇のまひや口腔、のどの手術後の言葉や嚥下(えんげ)の障害もSTの訓練で著しく改善します。県内にはSTがいる病院はまだ少ないですが、3年前に国家資格になり、増員が期待されています。
さらに、手足のまひや切断に対する装具や義手、義足、車いすを製作する「義肢装具士(PO)」、身体障害の認定や復職、転院などについてのアドバイスや連絡、調整をする「ソーシャルワーカー(MSW)」も、大切な職種です。
人間の多彩な機能の回復には、これらの多くの職種が十分な時間をかけてリハビリを行うことが必要です。しかし、日本では1日当たりの入院費やリハビリ料は欧米の2分の1−3分の1とあまりに低いために、理学療法や作業療法のマンツーマンの訓練は1日に40分ほどしか行えません。大学病院でも言語聴覚療法士や義肢装具士、ソーシャルワーカーも1人もいない状況です。
不十分なリハビリが家庭、社会復帰の遅れや本人、家族の大きな負担を引き起こしています。リハビリの重要性はかなり理解されてきましたが、さらに進めるには「リハビリ専門職」の充実と十分な訓練時間の確保がぜひ必要なのです。
( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・鎌田克也、田中信行)