第123回:可塑性リハビリ

脳神経の伝達回路変わる

 

 脳卒中や事故による脳損傷などでは、片まひや失語、失認、記憶障害、尿失禁など多彩な障害が見られます。その症状に応じたリハビリの効果については何度か述べてきた通りですが、今回は、なぜリハビリで脳の機能が回復するのかについて述べてみます。

まず、脳の損傷でどのような障害を示すかは、その人の脳のどの部位がやられたかで決まります。それは私たちが暮らす街にも地図があるように、脳の中にも地図ができていて「どの領域がどういう働きをする」ということがおおまかに決まっているからです。

 例えば脳卒中による手足のまひは、運動の命令を出す脳の中枢(運動領野)、そこからの命令を筋肉まで伝える経路(神経線維)がどこかで損傷を受けたために起こります。この運動領野の地図は、顔、手、肩、胴体、足というようにさらに細分化されていますが、それは体の面積と同じ比率で割り当てられているわけではありません。ヒトがよく使う手や話をするための口や舌の領域は、胴体や足よりもずっと広い地図があてがわれています。

 しかし、最近の脳研究では、この地図は大人になっていったん出来上がったら不変というわけではなく、「その使い方で大きく塗り替えられる」ことが分かってきました。例えば、手の運動領野の損傷で手のまひが起きたとします。そこでその手を使わないままでいると、まひも改善せず、周りの生き残った手の領域もひじや肩の領域に変わってしまいます。

一方、不自由ながらも手の細かい運動を何回も繰り返すと、次第にまひが回復するとともに、脳地図では手の担当領域が肩やひじの領域の中に広がってゆくことが分かりました。それは単に脳の手の領域の拡大だけではなく、その神経が脊髄までの伝達回路を作り、さらに手を動かす多くの末梢(まっしょう)神経との複雑な接続もできたということです。つまり、リハビリによって、それを行う「脳の地図も配線も変わる」ということで、これが「脳の可塑(かそ)性」といわれるものです。それはまひばかりでなく、失語や失行、失認、記憶、排尿の神経についても同様です。

すべての失われた機能が置き換えで回復するわけではありませんが、なるべく早い時期(発症後1−2週以内)から実現したい動きを正しい方法で徹底して訓練すること(1日2−4時間)が大切です。正しいリハビリで脳の地図を上手に塗り替えましょう。

( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・下堂薗恵、田中信行)

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