今、「家族看護」が見直されています。家族看護とは、看護の対象に、患者だけでなく家族も含めるという意味です。リハビリにおける家族の役割は特に重要で、 私たちも早くから家族に対して、患者の障害や心情を理解してもらい、介助方法や注意点についての学習を支援してきました。当センターが編集したテキストを使って、各職種の担当者が「家族勉強会」を毎週1回開いています。まず患者の病気と、それから生ずる片まひや失語、尿失禁、嚥下(えんげ)障害、痛み、うつ状態などの障害への理解を深めてもらいます。さらに、患者への適切な励まし方、日常生活の介助方法、薬の管理や食事、再発予防対策、福祉・保険制度についても話します。
ある日突然、事故や病気で手足が動かなくなり、言葉が話せなくなれば、本人はもちろん、その家族にも大きなショックです。本人が障害を受容するためにも家族の考えが大きく影響します。
Mさんは、脳梗塞(こうそく)による重度の左片まひと左側無視があり、自分の病状について自覚できない状態が続きました。はじめは日常生活動作は全介助でしたが、十分なリハビリにより、食事の動作も飲み込みもよくなりました。しかし、不注意で危険な行動が多く、車いすへの移乗も歩行も付き添いが必要でした。車いすの運転は患者自身が行い、歩行訓練は妻が付き添って行うことでリハビリのゴールは達成できました。妻は入院時から自宅介護の希望は強かったものの、面会と家族勉強会への参加のほかは、自分から夫の介助をする積極的な行動は見られませんでした。
そこで、主治医が患者の左側無視についてよく説明し、看護師やリハビリスタッフが介助の具体的なチェック表を作り、項目ごとに見学から実際の介助まで指導しました。練習を重ねた結果、妻も看護師と協力して介助を行うようになりました。介護保険制度による支援の調整も行い、試験外泊をして自信を持って自宅へ帰りました。
今まで自分がお世話になった両親や夫や妻、子どもが病気になったのです。すべてのリハビリや介助を病院任せにするのでなく、家族も一緒にリハビリを行い、介助することが患者を励まし、早期回復につながります。医療スタッフも家族の価値観や人間関係、介護保険による支援などを総合的に判断し、家庭復帰のための治療、看護計画を指導しています。患者、家族そして社会がそれぞれの役割を担いつつ、家族の変化に寄り添う細やかな対応が望まれます。
( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・三石久美子)