第128回:脊髄損傷

残った機能で自立訓練

 

 脊髄(せきずい)は脳からの命令を体全体へ伝えたり、逆に体中からあらゆる感覚情報を脳へ伝える大切な中継点です。脊椎(せきつい)と脊髄の関係はちょうど釣りのリール竿(さお)とそのガイドを通る釣り糸のようなものです。脊髄は脳に近い方から頚髄(けいずい)、胸髄、腰髄、仙髄に分かれており、肘(ひじ)を伸ばす神経は頚髄の7番目からとか、股(こ)関節を曲げる神経は腰髄の2番目からというように、どの筋肉はどの高さから神経がきているのか決まっています。

脊髄損傷は交通事故、高所転落や転倒、飛び込み、脊髄の腫瘍(しゅよう)や炎症、腹部大動脈瘤(りゅう)の手術による脊髄への血管の損傷、潜水による空気塞栓(そくせん)など、さまざまな原因で起こります。

Tさん(21歳、男性)は交通事故で第四頚髄が完全に損傷され、首から下の筋肉も感覚もすべてまひしました脊髄損傷では、損傷部位の高さと、野菜の輪切りのように完全に寸断された状態か、竹を折ったときのように不完全な状態かで、その後の残存機能が変わってきます。脊髄損傷のリハビリテーションでは床ずれや関節のこわばり、骨がもろくなるといった二次的な問題を最小限に防ぐこと、膀胱(ぼうこう)や排尿の管理をしっかりと行うことがまず大切です。次に残存機能をどのように日常生活に生かせるか考えます。Tさんは首やあごを使ったジョイスティック操作を習得し、電動車いすの運転やパソコン操作ができるようになりました。

胸髄損傷では両上肢が自由に使えるので、腕や肩、握力の鍛錬に努め、車いす駆動や車いすからベッドなどへの移動、排せつの自立へとつなげる訓練を行います。腰髄損傷では、車いすでの移動や車の運転をはじめ、すべての日常生活で自立できるように職業訓練まで含めた幅広い訓練を行います。このように、損傷を受けた脊髄の部位によって残存機能が変わり、訓練内容が異なるのが脊髄損傷のリハビリテーションの特徴です。

「残存能力をどのように生かせるか」と書きましたが、これまで不可能とされていた脳や脊髄の再生方法も研究されており、損傷を受けた脊髄自体の治療も今 後は期待できます。その日のためにも、骨の強さや関節の可動域を維持するといった基本的なリハビリテーションの管理が重要です。

( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・飯山 準一、田中 信行))

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