第129回:大たい骨頚部骨折

手術と歩行訓練早めに

 

 94歳の女性Yさんは外出中に約10センチ程度の段差につまずいて転び、そのまま起きあがれず入院しました。

 一般的に、年を取ると骨がもろくなり(骨粗鬆=そしょう=症)、ちょっと転んだだけでも骨折しやすくなります。転んだ後、太ももの付け根(大たい骨頚=けい=部)の激しい痛みを訴え、起きあがれなくなった場合、まずこの骨折を疑う必要があります。特に、脳卒中後の片まひのある人は転倒しやすく、まひ側の骨折が多く見られます。放置すると痛みのために寝たきりになり、肺炎や褥創(じょくそう)=床ずれ=など合併症を起こしやすくなります。この骨折が自然につながることは非常に少なく、時間もかかるため、早期に手術して、術後も早期にリハビリを始めることが原則になっています。

手術法としては、折れた部分を金属で固定する方法(観血的骨接合術)、あるいは大たい骨の骨頭部分を切除してセラミックやステンレスなどの人工の骨頭に置き換える手術(人口骨頭置換術)がよく行われます。

Yさんは病院でレントゲンを撮ると、大たい骨の頚部の細くなっているところで折れていました。この内側骨折は骨がつきにくいため、Yさんも入院後2日目には人口骨頭置換術を行いました。手術前から関節が硬くなって動きにくくならないように、また、手足の血行が悪くなり血の塊(深部静脈血栓)ができないように、骨折していない足関節の曲げ伸ばしをする関節可動域訓練を行いました。

術後、翌日からベッドを起こし、2日目には車いすに乗って、訓練を始めました。筋力増強訓練として、関節を動かさずに筋肉に負荷を与える等尺性運動を行い、術後1週間で平行棒内での立ち上がり訓練を開始、2週間目には平行棒内歩行訓練を始めました。4週間目には、理学療法士が介助して、つえで歩行する訓練をして、8週間後にはほとんど1人で歩行できるようになりました。退院前には、自宅に手すりを付け、通所リハビリテーションなどを計画し、手術後10週間で退院できました。

高齢であっても、発症後早期に、適切な診断・治療を行い、臥床時間を短くして訓練を早めに開始することで、再び歩くことができるようになる可能性があります。また、転倒予防のためには、日常生活場面での段差の軽減、適度な運動による筋力維持、骨折予防には、食事・運動による骨粗鬆症対策が必要です。

( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・原田 雄大、田中 信行))

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