第130回:クモ膜下出血後の合併症

脳梗塞、正常圧水頭症に注意

 

 くも膜下出血とは、おもに脳底部の動脈にできたこぶ(動脈瘤《りゅう》)が破れて脳脊髄(せきずい)液が入っているくも膜下腔に出血するものです。頭蓋内圧が急激に上昇するため、突然の激しい頭痛と吐き気、おう吐で発症します。死亡率も高いので、激しい頭痛や今までと異なる頭痛の場合は、すぐ脳外科を受診しましょう。動脈瘤の原因の多くは、先天的な動脈壁の一部の欠損、あるいは60歳以降では動脈硬化によるものです。抵抗の弱い部分が血圧によってこぶ状に膨らみ、ついに破裂するわけです。ほかに脳動(静)脈奇形や脳腫瘍(しゅよう)などからの出血もあります。診断は特徴的な症状と頭部CT、腰椎穿刺(ようついせんし)による血性髄液で確定します。

早急に脳血管造影を行い、脳動脈瘤が見つかった場合、開頭手術をして、こぶの根元をピンで結び留めます(クリッピング術)。手術が困難な場合は手足の血管からカーテルを入れ、中から細いコイルを動脈瘤に入れてこぶを固める方法もあります。一部の人は発症後1−2週間目に脳血管の強い収縮による脳梗塞(こうそく)や数カ月後にくも膜下腔の血管に出血した血中のフィブリン(凝固物質)が付着し、髄液の吸収が悪くなる正常圧水頭症が起こる場合もあります。

64歳の男性Aさんは手術後、まひもなく順調に回復していましたが、発症3カ月ごろから次第に歩きにくくなり、物忘れや計算力低下の痴ほう症状や尿失禁も始まり、おむつをするようになりました。頭部CTで脳室の拡大と髄液の排出低下もあり、正常圧水頭症と診断されました。そこで再び脳外科に入院し、頭蓋骨にあけた小さい穴から脳室に細い管を入れ、髄液を皮下のチューブで腹腔に流すシャント術を行いました。歩行訓練や生活訓練などのリハビリも十分に行い、約1カ月後には歩行も食事も排せつも自立し、1人で生活できるようになりました。

とくに2−3カ月後から歩きにくい、転倒しやすい、もの忘れが激しい、痴ほう症状や尿失禁などが見られたら、まず正常圧水頭症を疑い、脳外科を受診することが重要です。早期の予防、治療とリハビリがいずれも大切です。

( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・松下 佐代子、田中 信行))

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