骨粗しょう症とは骨を作る細胞とその細胞に沈着するカルシウム塩、すなわち骨量が著しく減少した状態です。骨がもろく、骨折しやすくなります。最も多い原因 は老人性骨粗しょう症ですが、若くても長期間の寝たきりや手足のマヒ、副腎皮質ホルモンの長期投与などが原因で起こります。
診断は、腰椎(ようつい)や手指骨のX線吸収率や骨量を調べたり、レントゲン撮影で腰椎の骨濃度や変形を見て判定されます。また最近では、血中や尿中のオステオカルシン、デオキシピリジノリン、NTxなどの代謝産物(骨代謝マーカー)を測定する方法も保険が適用され、診断や治療に用いられています。
女性のSさん(78)は脳卒中のため、右片まひとなりました。転倒して第1番目の腰椎の圧迫骨折を起こし、激しい腰痛のため寝返りを打つこともできず、当院に入院しました。レントゲンを撮ると、通常は円柱状の第1腰椎が上下から押しつぶされたように扁(へん)平に崩れていました。また、腰椎全体の影が非常に薄く、骨折部だけでなくほかの腰椎も変形していました。血中、尿中の骨代謝マーカーも異常値を示しており、重度の骨粗しょう症と診断されました。
骨折部が安定し腰痛が消えるまではベッド上で寝たきりに近い状態になりますが、手足の筋力の低下や関節がかたくなるのを防ぐためにリハビリが大切です。寝たままでも腕や肩の運動は自分で行い、下肢の訓練は腰や股(こ)関節の動きを伴わない等尺性運動をしました。また、活性型ビタミンD3、ビスフォスフォネート製剤の服用やカルシトニン製剤の注射など骨を作る成分をとりました。その後、コルセットをつくり、座位や立位の訓練を開始しました。入院3週目にはコルセットをした状態で自力で起きあがれるようになり、4週目には歩行訓練を始めました。温水プールでの水中訓練は体重負荷が少ないため痛みもなく、血行も良くなり、最も効果がありました。2カ月後には痛みが消え、一本づえと下肢装具で歩けるようになりました。半年後には骨代謝マーカー、骨量も改善しました。
骨粗しょう症の予防は「骨は1日にして成らず」の言葉通り、十分カルシウムを摂取し、日光浴、運動を行うことが重要です。特に女性は、若いときの骨量がその後の骨量を決定するとも言います。また、更年期後の女性は女性ホルモンの投与も効果があります。お年寄りには、転倒防止のために段差の解消や手すりの設置、照明にも留意するなど日常生活への配慮も大切です。
( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・久松 憲明、田中 信行))