第132回:手足の感覚異常

抗うつ・抗てんかん剤有効

 

 私たちの皮膚には、触覚、痛覚、温冷覚を感じるそれぞれに特有の「感覚受容体」が体全体に分布しています。そのほかに筋肉や腱には引き伸ばしを感じる深部感覚受容体もあり、手足や体の曲がり具合が分かります。

 脳卒中や脊髄(せきずい)損傷では運動神経の損傷による手足のマヒが注目されますが、この感覚神経も同じく傷つきます。また、糖尿病や頸椎(けいつい)、腰椎の変形などによる末梢神経の障害も非常に多くみられます。

 症状としては単に触覚や痛覚などの低下だけでなく、いわゆるしびれたようなジンジン感、あるいはピリピリ、ヒリヒリ感を訴える人もいます。さらに、触った刺激が不快な痛みに変わる人もあり、いずれも他人には分からないつらさです。

 このため、患者はリハビリに集中できなかったり、食欲低下やノイローゼ、うつ症状まで出てくる場合もあります。日常生活の質の低下、リハビリを阻害する要因として問題になります。

 この治療には、通常の鎮痛剤はまったく効果がなく、抗うつ剤、抗てんかんが有効です。場合によって、数種類を組みあわせて使ったり、脳外科で脳や脊髄の電気刺激を行う方法もあります。

 一方、感覚がなくなると、痛み、温度などが分からずに、やけどや潰瘍(かいよう)などが起こることもあります。気づかずにいると、深い難治性の潰瘍や床ずれになるので注意が必要です。

 T・Hさんは2年前、脳出血で左半身の運動まひと感覚鈍麻が起こりました。なんとも言えない嫌な感じ(ジンジン感)が続き、夜間床に入っても眠れず、 らい時間を我慢していました。当院を受診し、この異常感覚に対して、抗うつ剤(SSRI)に少量の抗てんかん薬を併用しました。ジンジン感は10分の1までおさまり、睡眠もリハビリも順調に進むようになりました。

 前述の種々の原因による感覚の異常も適切な薬で改善することもあります。あきらめず専門医に相談してみてください。

 (鹿児島大学医学部リハビリテーション科: 堀切豊、田中信行)

目次に戻る