障害者が利用しやすい低床バスや福祉タクシーなどの普及も大切ですが、障害者自身で自動車の運転ができれば社会復帰の大きな一助になります。実際に脳卒中やせき髄損傷者でも自動車を運
転されている方はたくさんいらっしゃいます。
ただ、手足のまひや切断、視覚や聴覚などの障害がある人の運転には、安全のためのきちんとした検査や、場合によっては車の改造が必要です。すでに免許を持つ人も臨時適性検査を受けな
ければなりません。鹿児島県の場合は、鹿児島市谷山の県交通安全教育センター=099(266)0111=で予約制で行われています。
検査内容は障害の種類や程度で異なりますが、身体検査や運転シミュレーターによる各種ペダルや装置の操作能力テストが行われます。その結果、「不適格」と判断されれば免許取り消し、
「適格」ならそのまま運転可、「条件変更」なら指定された条件に車両の改造が必要です。「不適格」と判断されても、一定期間後の再検査となることもあります。このように運転を許可する権限
は公安員会の検定委員の判断によりますが、一応それぞれの専門医の意見も聞いてみるべきでしょう。
Aさん(55)は脳出血により右手足のまひと失語症があります。しかし、前述の手続きを経て、「オートマチック車でハンドルに回旋ノブおよびペダルに補助装置を取り付けた車に限る」
という条件で運転可能と判断されました。自動車 改造費助成制度を利用して改造し、通院に、買い物にと毎日、自動車を運転しています。
一方、Bさん(40)は脳出血により、左手足のまひとなりましたが、趣味の楽器演奏もできるまでまひは回復しました。車の運転も「適格」と判定され運転を再開しましたが、車の左側を
ぶつける事故が続いたため自主的に運転をやめました。実はBさんは左側を見落とす「左半側空間無視」という障害を合併していたのです。通常の適性検査では見過ごされやすいのですが、このよ
うな「認知機能」や「知的機能」の障害の方が、手足のまひよりも運転に大きな問題となります。車の運転は「頭でするもの」といわれているように、単なる車の操作能力だけでは判断できないの
です。
障害者に限らず自動車の運転には、そのもたらす利益と、安全性や交通加害者になることの危険が同居しています。専門医の判断を聞き、臨時適性検査を受けたうえで、「個人の責任」で運転
するという意識が大切です。
(鹿児島大学医学部リハビリテーション科: 二宮 宏二、田中 信行)