第138回:HAM

継続的な訓練が必要

 

 HAM(HTLV−1関連脊髄(せきずい)症)は、成人T細胞白血病(ATL)の原因であるHTLV−1というウイルスの感染によって引き起こされる脊髄の障害です。鹿児島大学第三内科

の井形教授・納教授らにより提唱された疾患で、HTLV−1−associated myelopathyの頭文字をとってHAMと呼ばれ、南九州地域に多い疾患です。脊髄の中でも胸髄が

強く障害され、両下肢の痙(けい)性(筋肉の突っ張り)とまひによる歩行障害に加え、排尿・排便障害、下肢のジンジン感・痛みなどが起こります。

治療法として、HAM発症の原因である過剰な免疫痙反応を抑えるステロイド剤や、最近ではインターフェロンαという薬が使われ効果をあげています。それでも発症すると過半数の人が何らか

の障害を残すため、脊髄損傷としてのリハビリが重要です。痙性に対しては筋弛緩(しかん)薬の投与や神経ブロック、排尿障害に対しては抗コリン薬の内服や間欠自己導尿などが行われます。そ

れとともに筋力増強訓練や歩行訓練などの運動療法を継続していくことが大変重要です。

 46歳のMさんは、5年前から歩行困難を覚え、徐々に症状が進行しHAMと診断されました。薬物治療を受けましたが満足のいく効果が得られず当センターへ入院されました。Mさんは痙性は

強くなかったのですが、リハビリがほとんどなされなかったため両下肢の筋力が著しく低下しており、自力では立つことも困難でした。そこで蛋白(たんぱく)同化ホルモンの投与や筋力増強訓練

とともに、起立訓練や杖を使用した歩行訓練を行いました。それから日に日に筋力がつき、3カ月後には両手でT字杖をついて歩行できるようになり自宅へ退院されました。

 HAMは通常ゆっくりと進行する病気ですが、患者さんの中には病気の進行よりもリハビリの不足による筋力の低下や尖足(せんそく)・内反足(足先が突っ張り、内側にねじれる)が歩行

障害の原因になっていることも少なくありません。そのため痙性や足部変形を防止する専門的リハビリに加えて、自宅でも反復立ち上がりにより筋力を保つ訓練が大変重要です。また尖足防止のた

めに、斜面台を利用し足を背屈させた状態で15分程度起立位をとることで、ふくらはぎの筋肉を十分に引き伸ばすことが大切です。そのための安価な斜面台も市販されており、家庭で行えるリハ

ビリとして利用されることをお勧めします。

(鹿児島大学医学部リハビリテーション科: 吉田輝、田中 信行)

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