障害者の職業リハビリテーション(以下職業リハ)とは、「すべての障害をもつ人々が適当な雇用に就き、それを継続し、かつそこにおいて向上できるようにすること、並びに、それより障害を
持つ人々の社会への統合、または再統合を促進すること」と定義されています。
障害者の就職は、一般の労働者と同格の「一般雇用」と「福祉的就労」としての福祉工場や授産施設、小規模作業所などで働くものがあります。一般雇用であれば、まず公共職業安定所(ハロー
ワーク)への登録からサービスが始まります。必要に応じて、職場適応のための訓練や能力開発校での技能習得も行います。全国にある地域障害者職業センターはハローワークと連携しながら、障
害者の就労を支援しています。ここでは障害者職業カウンセラーが、職業評価や職業準備訓練、職業講習などを行っています。最近では、こうした「訓練後に就職」ではなく、特に重度障害者を対
象に「就職後に訓練」を行うところもあります。
脊髄(せきずい)損傷や下肢切断者は、縫製、加工業、電気修理、コンピューター作業への一般雇用も増えつつあります。しかし、片まひや失語、記憶障害などを伴う場合は、なお困難な状況で
す。
Mさんは21歳の男性で、交通事故で脳挫傷、びまん性軸索損傷と診断されました。軽い右片まひと、記憶障害、自発性、集中力など前頭葉の機能のリハビリのために当院に入院しました。はじ
めは短下肢装具とつえで歩行訓練をしていましたが、退院時には装具もつえも必要なく、歩行できるようになりました。また、記憶障害は改善したものの十分ではなく、メモを活用しました。同時
に二つのことを考えるのが苦手で、1日の計画を立てるのに時間がかかりました。事故前は自動車の整備士で、職場復帰の希望が強く、会社の人やカウンセラーと何度か一緒に話し合いました。し
かし、筋力などの低下のためすぐに復帰は難しいと思われました。
退院後、障害者職業センターで職業適性検査、ワープロ講習などを受け、スポーツセンターで水泳をして体力もつけました。そこで、まず手伝いをさせてくれるように、整備工場に頼んだとこ
ろ、許可が出ました。現在は整備の助手をしながら完全復帰に向けて努力しています。
障害者の雇用については「障害者の雇用の促進等に関する法律」で、障害者を従業員の一定比率以上(国および地方公共団体2.1%、民間企業1.8%)を雇うことを事業主に義務づけていま
すが、十分に守られていません。
障害者の職場復帰には、本人の努力も必要ですが、障害者を受け入れる社会の環境をつくることが現在必要だと思われます。
(鹿児島大学医学部リハビリテーション科:有馬 美智子、田中 信行)