肺は空気中の酸素を取り入れ不要な炭酸ガスを排出します。空気の通路は気管、気管支と木の枝のように分かれて細くなり、末端は径が100−200ミクロンくらいの肺胞になります。ここ
で心臓から来る血液との間でガス交換を行っています。
気管支の炎症(慢性気管支炎)によるたんの貯溜(ちょりゅう)やタバコによる刺激、アレルギーによる喘息(ぜんそく)があると、息の吐き出しが悪くなります。このため肺胞は次第に拡張し
て汚い空気がたまり(肺気腫)、息切れが起こります(閉塞=へいそく=性肺疾患)。放置すると確実に進行し、酸素吸入が必要になります。
Hさんはやせ型で顔色が悪く、前かがみで歩き、肩で息をしています。せきやたんが多く、動くとすぐ息切れが起こり、休憩をはさまないと歩行もできなくなりました。喫煙の習慣が長く、10
年前から慢性気管支炎と肺気腫と診断され、内服薬を処方されましたが、一向に症状が改善せず悩んでいました。
治療には気管支拡張剤や抗生物質などの薬を用いますが、呼吸訓練によるリハビリテーションも非常に大切です。
第一は、「体位性喀痰(かくたん)排出」で、四つんばいになって頭を低くし、軽くせきをしたり背中をたたいてたまったたんを排出します。特に起床時は必ず行い、ネブライザー吸入などでた
んを柔らかくしてから行うのがコツです。
第二は「口すぼめ呼吸」で、肺胞内にたまった空気を残さず吐き出すことです。口笛を吹くように唇をすぼめて呼気を最後まで押し出します。その後に鼻から腹をふくらませて軽く息を吸い(腹
式呼吸)、またゆっくり唇をすぼめて吐き出す動作を繰り返します。
運動は動脈血の酸素分圧が低い場合には少量の酸素を吸入しながら、徐々に運動量を増やすこともできます。運動療法は筋肉の酸素利用率を高め、胸郭・腹部の筋力を増強して、さらに肺機能を
改善します。
プールでの水中訓練も水圧で残気量が減り、たんの排出も楽になります。水深を次第に深くし、また水中で息をブクブク長く吐く訓練や歩行訓練が非常に有効です。Hさんもタバコをやめ、呼吸
訓練と水中訓練で息切れが改善し、退院されました。
(鹿児島大学医学部付属病院霧島リハビリテーションセンター:堀切豊、田中信行)