腎臓で作られた尿は尿管を経て膀胱(ぼうこう)にいったんためられ、尿道を経て体外に排出されます。膀胱と尿道を合わせて下部尿路といいますが、脳出血や脳梗塞(こうそく)、脊髄(せ
きずい)損傷、前立腺肥大などの病気で、下部尿路がうまく機能しないことを排尿障害といいます。
正常な人は、尿が膀胱にたまると尿意が生じ、さらに十分な量の尿をもらすことなく、ためることができます(蓄尿・ちくにょう)。そして、排尿しようと思えば速やかに膀胱内に尿を残さず出
すことができます(排出)。1日の尿量は通常1000−1500ミリリットルで、尿回数は1日3−7回くらいです。
排尿障害がある場合は、蓄尿と排出の働きのどちらが低下しているか、見極めることが重要です。
脳梗塞を起こしたAさん(74)は、尿回数が1日16回と多く、尿意を催すと我慢できずに尿失禁を起こすため、おむつをしていました。膀胱内圧検査をしたところ、尿を体外に出そうとする
膀胱の収縮力は十分あるものの、膀胱の容量が180ミリリットル(正常者は約400ミリリットル)に減っており、蓄尿の働きに問題があることが分かりました。
そこで、膀胱の収縮を抑え、容量を増やす薬を使ったところ、尿回数は減り、失禁もなくなったため、おむつを外すことができました。
一方、脳出血を起こしたBさん(44)も、尿回数が1日15回と多かったのですが、排尿後に膀胱に残る尿量(残尿)が300ミリリットル(正常者は50ミリリットル以下)もあることが分
かりました。Bさんも膀胱内圧検査をした結果、膀胱の容量は600ミリリットルにも増えており、かつ収縮力が不十分で、排出の働きに問題があることがわかりました。そこで、膀胱の出口を広
げて排出しやすくする薬と膀胱の収縮力を強める薬を併用したところ、残尿は減り、尿回数も減りました。
同じ排尿障害でも、その障害の種類によって、治療法は異なります。以前、本欄でも紹介しましたが、脊髄損傷では別の薬を使ったり、自己導尿の指導を行います。女性に多い腹圧性尿失禁は、
骨盤底筋の訓練や簡単な手術で改善します。
排せつの問題は、日常生活はもちろん、その人の尊厳にかかわる問題ですが、ほとんどは適切な治療が可能です。本人、家族だけで悩まず、専門医を受診することが重要です。
(鹿児島大学医学部リハビリテーション科:二宮宏二、田中信行)