第147回:前頭葉の機能障害

薬剤で意欲低下の改善を

 

 くも膜下出血とは、脳底部の動脈にこぶ(脳動脈瘤(りゅう))ができて、それが破れて脳脊髄(せきずい)液が入っているくも膜下腔(くう)に出血するものです。死亡率が高いため、急に激

しい頭痛が起こったときは専門の医師にみてもらう必要があります。

開頭手術をして出血した動脈瘤を除去すれば、それで終わりと思われがちですが、決してそうではありません。4−5日後に、血液にふれたために血管が縮むことで、しばしば脳梗塞(こうそ

く)が起こることがあります。また、1、2カ月後に髄液の流れが悪くなる正常圧水頭症が生じることもあり、そのシャント手術やリハビリも大きな問題となります。とくに、前大脳動脈の動脈瘤

破裂では、前頭葉の脳梗塞が生じやすくなります。まひや失語症も軽いのに、意欲、注意力、記憶力が低下することがあります。また、怒りやすくなり、夜間にせん妄もあり、リハビリは難しいの

が現状です。

75歳の女性Aさんは、くも膜下出血を起こし、出血した前大脳動脈の動脈瘤のクリッピング手術を行いました。意識障害が回復した後、明らかなまひはないのに、自分から話すことも起きあが

ることもできず、食事は管を通して栄養剤をとる状態で入院しました。

頭部CTスキャンで左前頭葉の梗塞が発見されました。リハビリとして、介助しながら車いすに乗せたり、話しかけたり、道具を使用したりしましたが、なかなか反応がありません。脳機能ふ活

剤のアマンタジンも効果がなく、中枢神経を興奮させるメチルフェニデートを少量から服用しました。

その後、声かけに対して「はい、いいえ」と返事をするようになりました。介助つきで立ち上がる訓練に続けて、自力で立つよう促し、4カ月後には、歩行器で歩く訓練ができるようになりまし

た。

食事は、一部介助が必要ですが、さじを使って自分で食べることもできるようになりました。メチルフェニデートは徐々に減らし、中止しましたが、Aさんは活動的で、リハビリに励んでいま

す。

メチルフェニデートは、量が多すぎると幻覚や妄想が出ることがあり、注意が必要です。くも膜下出血だけでなく、その原因を問わず、前頭葉機能障害のリハビリは難しいものの一つです。適切

な薬剤を使用することで、リハビリに取り組めるよう、意欲低下を改善することが最も大切です。

(鹿児島大学医学部リハビリテーション科:松窪いずみ、田中信行)

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