東郷 伸一(とうごう しんいち)
鹿児島大学医学部リハビリテーション医学講座 助手
学会前になる度に繰り返される、スライド作り狂想曲、あなたも私もウンザリしてますね。
何とか役に立つものはできないか? とこんなモノを書いてみました。
まずは、総論・基礎編です。
読んでみて、どの部分が分かりにくいとか、指摘していただけるととても嬉しいのですが...。
註:このドキュメントは、万年ビギナー揃いの鹿大リハ科医局員向けです。
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1.仕上がりを考える
・サイズとアスペクト比
・出力機器
・解像度とは?
・フィルムプリンタの解像度について
・画像をスキャンする際の注意点
・パラドックス〜線画の方が高解像度が必要?
・デジカメの利用について
・色数の問題
3.サービスビューローに持ち込むとき
・ソフトの選定
・フォントの問題
・ドライバの問題
1.仕上がりを考える
モノ作りにおいてはすべからくそうなのだが、どんな仕上がりになるのかを最初にイメージしておかないといけない。素材の選択の段階からそれは始まっている。もちろん、パソコンで扱うディジタルデータは複製・改変が容易で、日曜大工の失敗みたいに素材が全てパーになることはないのだが、後になっていじくり回すよりも、最初に必要な設定にしておいた方が楽なのは言うまでもないことだ。
では、まず何を考えるべきなのだろうか?
サイズとアスペクト比、そして出力機器と、その解像度・色数について考えておかねばならない。
マイスターたらんとする者は素材と道具には精通していなければならないんである。
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・サイズとアスペクト比
最初に考えるべきは、仕上がりサイズである。印刷物であれば、ハガキに印刷するのか、A全のポスターにでもするのか、それをきちんと考えなければならない。拡大・縮小は簡単なのだから、などと言うなかれ。それを言っちゃぁ、その時点で落第である。スキャナ・デジカメの画像やPhotoShopあたりで加工した画像はビットマップデータ(点の集合とでも思って欲しい。点描画みたいなもんである)となっていて、ベクトルデータは欠落しているから、不用意に拡大・縮小するとまともな絵にならないんである。ましてスライドの場合、フィルムプリンタの解像度が決まっているから、きちんと綺麗に見せたければ、最初から仕上がりサイズを頭に入れておかねばならない。
アスペクト比というのは、要するに縦横比のことである。スライドフィルムの場合であれば、約 3:2、日本国内で流通している(A版だのB版だのという)紙の場合であれば ルート2:1、コンピュータの画面は(一部例外を除いて)4:3、である。ついついA4の用紙設定でスライドファイルを作って、焼き込む段階になって用紙設定を変更したら中身がグシャグシャになった、という経験をお持ちの諸兄も多いのではないだろうか?
私自身の経験(そう。私も何度も泣いた...)から言えば、図表などの類は全てスライド用の設定(アスペクト比 = 約 3:2)で作っておくべきである。紙に印刷する場合は、アスペクト比を崩さない設定で印刷すればよろしい。
この場合「逆もまた真なり」という考え方はお勧めしにくい。スライドの場合は、出来る限り表示可能領域を縦横均等に使ったプレゼンテーションの方が綺麗に見えるものである。レイアウトにおける「非対称な余白の美」ということはもちろん否定しないが、スライドの場合マージンは出来るだけ均等に使いきった方がいい。と私は思う。
白紙の上のプレゼンと違って、暗室で映写されるスライドではバックグラウンドも含めた全体が認知の対象になると思うんである。
画像と説明文とが混在するようなスライドの場合は、最初にレイアウトを考えて、画像の占める面積(少なくとも画像自体のアスペクト比)について考えておく必要がある。
結論:要するに、簡単なことなのだ。作り始めるにあたって、まず最初に用紙設定して、35mmフィルムの設定になっているのを確認することが肝要なんである。
註:フィルムの種類は、ISO100に設定すること。
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・出力機器
スライドだけとして使うのであれば、出力機器はフィルムプリンタだけを想定すればよい。しかし、後日(プリンタで、あるいはリバーサルフィルムからのDPEで)紙に印刷して論文用図表として再利用するつもりであれば、その用途にも耐えるようなものを作っておかねばならない。
また、作成したスライドを再スキャンして使うことがあるようなら、さらに注意が必要である。
そのためには、各出力機器の特性(解像度・色数etc)について知っておかねばならないんである。
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・解像度とは?
これが結構難物で、諸兄・諸姉にいくら説明してもなかなか分かってもらえない。ここで説明しても理解してもらえる自信はないのだが...。逃げるわけにもいかないので、簡単に書いておく。ある単位長さの内にどれだけの点(線)を描画できるか、ということだと考えて欲しい。
パソコンでよく使われる単位は、dpi(dpi=dots per inch)である。ppi(ppi=pixels per inch)と言うこともあるが、同じコトだと考えてもらって差し支えない。
商業印刷などの分野では、lpi(lpi=lines per inch)という単位を用いることが多いようだ。大まかな換算式はあるようなのだが、失念した。ここで思い出すつもりもない。
要は、諸兄・諸姉に理解していただきたいのは、後で詳しく述べるが、解像度と画像の大きさ(縦横の長さor面積)、画像のファイルサイズ(何KBか)には下記のような関連がある、ということなのである。
縦の長さ×横の長さ×解像度の2乗 = k ×ファイルサイズ(k = 定数)
同じ画像の解像度を上げれば縦横の長さは小さくなるし、同じ画像を大きく見せたければ解像度が落ちるんである。
例えば、2×2インチで解像度200dpiの画像があったとする。この画像を構成する画素数は2×2×200×200=16万ピクセル、ということになる。一方、1×1インチで解像度400dpiの画像があれば、この画像の持つ情報量(画素数)も16万ピクセルであり、4×4インチで解像度100dpiの画像も情報量(画素数)は16万ピクセルである。見た目の大きさに惑わされてはならない。
結論:縦の長さ×横の長さ×解像度の2乗 = k ×ファイルサイズ(k = 定数)
註:k(k = 定数)は、画像の色数(1ピクセルで表現可能な色数)によって変化する。
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・フィルムプリンタの解像度について
一般に流通しているフィルムプリンタの画素数は、Draft モードで、1024×683、High Quality モードで、2048×1365、Professional モードで、4096×2730、といったところである。高級機には、さらに上の、8192×5460 をサポートしているものもあるが、ウチの職場にあるのはそんな上等ではない。4096×2730 が最高。
その 4096×2730 でも、フィルム上の実解像度は 2970dpi を超える。
こんなものを画面上でリアルサイズのWYSIWYG(画面の解像度は72dpi程度である)で編集させられてはたまらんので、多くのフィルムプリンタ(のドライバ)の場合、仮想の大きな用紙の上で編集するようになっている。ウチの職場にある GCC ColorFast という機種の場合、19.05×12.70cm程度の用紙を仮想している。これだと解像度546dpi程度の設定だ。
ただし、MS PowerPoint の場合のみ、デフォルトでは27×18cmの用紙を仮想している。
つまり、MS PowerPoint の場合のみ、解像度385dpi程度の設定となる。
つまり、Professional モード(4096×2730)で作成したドキュメントに画像を貼り付ける場合、対応できる解像度は最高546dpi程度で、それ以上の解像度にしても無駄というわけだ。High Quality モード(2048×1365)なら、最高273dpi程度、ということになる。それにしても、546dpiで19.05×12.70cmの大きさのフルカラー画像のファイルサイズは30MB以上(!)である。273dpiでも8MB前後。意味もなくこんなでかいファイルを扱いたいと思う者はいないであろう。適切な解像度、というのは、実はもっと低い。
最近普及してきた「写真画質」のフルカラーインクジェットプリンタでの印刷の場合、プリンタの解像度が600×1200dpiとか720×1440(720)dpiであり、基本的にはディザなどの誤差拡散法で階調表現していることを考えると、印刷対象の至適解像度は200〜360dpiであるとされている。
さらに言えば、コンピュータの画面上でのディスプレイを考えるなら、パソコン(用ディスプレイ)の画面解像度は72〜96dpiが一般的である。ホームページ用の素材に240dpiなんていう馬鹿でかい画像を貼り付けている例をみることがあるが、愚の骨頂としか言いようがない。アクセスした人に印刷させることを考えているのであれば、別途にダウンロード出来る画像を用意しておくか、LivePicture 社あたりの、それ専用のフォーマット(WEBサーバが対応する必要があるが)を用意するべきである。
さらには、商業印刷にデジタルデータを持ち込む場合でも、300dpi程度の画像で十分な質感が得られている。
これらのことを勘案すれば、スライドに貼り付ける画像の最終的な解像度は200〜300dpi以下で十分であると考えられる。これだけあれば、スライド用のファイルを印刷に流用しても、ほぼ遜色ない品質が得られると考えよう。
スライドだけにしか用いないデータであれば、もっと低解像度(150〜200dpi以下)でも大きな問題はないと思ってよい。
ただし、作成したスライドを再スキャンして利用する可能性があれば、出来る限りの高解像度(ただし、546dpi以上は意味がないことに注意)に設定しておかねばならない。スキャンを繰り返す度に解像度は落ちて行くんであるから。
結論:スライドに取り込む画像の「最終的な解像度」は200〜300dpi以下で十分である。
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・画像をスキャンする際の注意点
では、実際にスキャナで画像を取り込む際、何も考えずに「解像度=200〜300dpi」程度の設定で取り込めばよいのであろうか? 断じて、否、である。最終的にスライドに貼り付けたときの解像度が200〜300dpi程度であればよい、ということである。スキャンする時点では、また別の話である。前項で「最終的な解像度」と書いたのは、そういう意味である。
実際に、19.05×12.70cmのスライドの中に、10×10cmの画像を200dpiで貼りつける場合を想定してみよう。
スキャンする元絵のサイズが10×10cmであれば、スキャナの取り込み解像度は200dpiでよい。しかし、元絵のサイズが5×5cmであれば、取り込み解像度は400dpiでなければならない。逆に、元絵の縦横が大きくて20×20cmであれば、取り込み解像度は100dpiでよい、ということになる。
つまり、 貼り付ける時点での画素数がどの程度かと考えるとよい、ということなんである。
実際には、取り込んだ画像をトリミングしたりするので、やや大きめの解像度・サイズで取り込むのが望ましい。
また、スキャナによっては、取り込み解像度に加えて取り込み時の倍率設定が影響するものもある。さらには、取り込んだ画像を保存する際に、自動的に解像度を72dpiにセットし直すスキャンニングソフトもある。
結局は、Photoshop などのレタッチソフトで最終的な画像を得なければならないことが多い(Photoshop の利用法については、別項)。というか、これは必須の作業と考えて欲しい。スライドファイル上で、オブジェクトのポインタをドラッグしてリサイズしたり、トリミングするなど愚の骨頂である。それまでの苦労を全てパーにして汚いスライドを作っているだけのことだ。
はじめに「どんな仕上がりになるのかを最初にイメージしておかないといけない」と書いたのは、まさにそういうコトである。
結論:やや大きめの解像度・サイズで取り込み、Photoshopで仕上げるべし。
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・パラドックス〜線画の方が高解像度が必要?〜視覚情報処理と認知の問題について知るべし
近年のプリンタの高性能化はすさまじく、レーザプリンタなどは、実売3万円の機種でも解像度600dpiだったりする。インクジェットプリンタも然りで、720×720dpiの「写真画質」機種が実売3万円台まで落ちてきている。こうなると、何がなんでも解像度を上げてしまわねば、という誘惑にかられてしまうが、実際の至適解像度というのはもっと低い。というのは前項で書いた。ここではその補足をしておきたい。
一般的な「写真画質」のインクジェットプリンタの場合、1つの点で表現できる階調が3〜9程度のもので、複数の点の集合をフルカラーの階調を持つ1つの点に見せようとしている。したがって、カラーインクジェットプリンタで印刷する画像の至適解像度は、せいぜいプリンタの解像度の1/3〜1/2程度だ、ということになるわけである。プリンタメーカ側での高画質化対策としては、1つの点の階調数を上げる(薄いシアン、薄いマジェンダなどという「フォトインク」を利用する)か、解像度を上げる(ひとつひとつの点を小さくする)か、という事になる。
一方、1つの点がフルカラーの情報を持つ「昇華型」のプリンタやフィルムプリンタの場合、そこまで解像度にこだわる必要はない。コンシューマ向けの昇華型プリンタなど、解像度は144〜288dpi程度のものである。実際に見てみれば分かるが、144dpiの昇華型プリンタで出力した写真画像などは、実に「写真らしい」仕上がりになっている。ディザ拡散法などで360dpiで印刷するよりも、はるかに自然な「写真」だと感じる向きも多いのではないだろうか? あるいは、コンピュータのディスプレイ上でフルカラー画像を見ることを考えて頂ければ、もっと分かりやすいかも知れない。せいぜい72〜96dpiの画面で見る絵がとても綺麗に思えるだろう。
註:CRTディスプレイの場合、他のいろんな問題が背景にはあるが、ここでは触れない。
ところが、文字や線画、階調数の少ない画像の印刷になると、これが一転してしまう。144dpiの昇華型プリンタで出力した線画や文字など、見られたものではない。シャギー(ギザギザ)がひどくて、とても使えない、と感じるであろう。特に、文字や1bitの線画の場合は顕著である。
何故にこのような「目の錯覚」が起こるのか、という事に関しては、視覚情報処理と認知の問題についての深い考察が必要である(かも知れない)が、わが輩にはそのようなことを説明する能力もないし、この文章の中でそのようなアカウンタビリティを負わねばならないとも考えない。ゼキの本でも読んで、それから、川平助教授や緒方女史に訊いてみて欲しい。なかなかに楽しいディスカッションが出来ることだろう(かも知れない)。
ただし、コンピュータ側での画像処理に起因する問題について述べるとすると、このような事が言えるであろう。右の図を見て欲しい。
上段下段それぞれ中央のような元画像があるとする。この解像度を1/4に下げると、4×4 = 16ピクセルの内容を1ピクセル内に格納せねばならない。
階調処理が可能であれば左側に示したように、上段はやや薄いグレーに、下段はやや濃いグレーになる。このようにして処理すれば、画像のざらつきは抑えられるが、やや「眠たい画像」になりやすい。
一方、1bit処理になると、右側に示したように、上段は白、下段は黒としてしか表現されない。画像がかなりざらつくであろう。しかし、白と黒しかないハイコントラストになるので、エッジの立ったシャープな画像が得られる、とも言える。
線画の場合、階調数を落としてシャープさを取る代わりに解像度を上げてざらつきを抑えるべきであるし、写真などの場合はその逆、ということなんである。
以下に実例を供覧する。ただし、解像度の低い(他にも問題はあるが)CRTディスプレイ上でのプレゼンであるから、多少は想像力で補って頂かねばならない面もあるのだが、そこは笑って許して頂きたいもんである。
24bit(1670万色)カラーのJPEG画像
72dpi
48dpi
24dpi
72dpi
8bit(256色)カラーのGIF画像
72dpi
48dpi
24dpi
72dpi
1bit(白黒2色)のGIFファイル
72dpi
48dpi
24dpi
72dpi
註1:上段は24bitカラーの写真(JPEG)、中段は8bitカラーの写真(GIF)、下段は1bitの線画(GIF)である。
特に48dpiの画像を見比べて頂きたい。私の言わんとすることが理解して頂けるだろうか?
註2:右側の大小2つの画像は、同じ画像の拡大率を変えて表示している。
サイズと解像度の関係を、また、適切な解像度で表示することの重要性を理解して頂けるだろうか?
要は、スライドに文字や線画を貼り付けるとき、ビットマップデータで貼り付けてはいかん、という事なんである。写真と説明文とを同時に、200dpi以下でスキャンしてスライドにしたとする。写真はきれいに見えても、説明文はかなり汚く見えてしまうだろう。面倒なようでも説明文は別途に入力し直すか、どうしても面倒なら出来る限りの高解像度で取り込まなければならない。
結論:文字や線画は出来る限り別途に入力する。さもなくば出来る限りの高解像度で。
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・デジカメの利用について
最近安くなった、本当に安くなった。お使いの諸兄・諸姉も多いと思う。
ただ、多くの(特に、最近子供の小遣い程度にまで(?)値下がりした30万画素程度の)デジカメの利用には注意が必要である。30万画素程度のデジカメで取得できる画像の画素数は、640×480ピクセル程度である。これを200dpiの画像にすると、縦横サイズは8×6cm程度である。19.05×12.70cmのスライドいっぱいに画像を広げたと仮定すると、解像度は100dpiを切ることになる。ディスプレイ上でのプレゼンには十分な解像度であるが、印刷用途にはお勧めできない。スライドにしても、じっくりと長時間見せる場合など、粗が目立ってしまうであろう。
また、高画質モード以外の保存では極めて目が粗くなる機種も見受けられる。
大きく引き延ばすことを想定している場合には、低価格デジカメの画像は不向きであると言わざるを得ない。
結論:デジカメを過信するなかれ
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・色数の問題
一般に、パソコンレベルでフルカラーと呼ばれるのは、約1670万色である。CRTモニタの3原色(Red, Green, Blue)それぞれについて、256階調(=2の8乗=8bit)の明るさを規定し、それぞれを掛け合わせて約1670万(=(2の8乗)の3乗=24bit)の色数を規定しているので、24bitカラーともいう。
ある種のアプリケーションでは「32bitカラー
(1670万色)」という表現に出くわすこともある。
これは何かというと、RGB各チャンネルの他に、
透明度を規定するアルファチャンネルを
加えている場合である。
しかし、残念ながら、アルファチャンネルを
まともに(有効に)扱えるソフトは、
コンシューマレベルではほとんどない。
一般人の場合、隣り合った同系色の階調差が0.4%(250分の1)以下だとほとんど弁別できないと言われているので、
註:右のチャートを見て欲しい。
下段のグラデーションがスムーズに見えるなら、
あなたも立派な(?)一般人である。
3原色について256階調もとっておけばフルカラーと呼んでもいいだろう、ということらしい。
かなり優秀なグラフィックデザイナ等の人種では、階調差が0.1%(1000分の1、約10bit階調)程度まで弁別できる、というから、彼らにとってのフルカラーとは30bit以上ということになるのかも知れないが。
最近のスキャナなどでは、取り込み時には各色10〜12bit(フルカラーで30〜36bit)で取り込んで、パソコン側にデータを渡すときに各色8bit(フルカラーで24bit)に修正するものが多い。これは、主には各色8bit(フルカラーで24bit)では補正しきれない「黒潰れ」や「白飛び」をスキャナ側で補正できるように、ということのようである。
さて、こう書いてくると、色数は多ければ多いほど良い、ということにも思えそうだが、ところがギッチョン、そうは問屋が卸さない。色数が多ければ多いほど、ファイルサイズがでかくなっていくのである。
8bit(256色)で10MBの画像データがあったとしよう。これを24bitで取り込めば30MBのファイルになる。高速なCPUと高速なビデオカード、大容量のメモリとディスクを搭載したマシンでも、30MBのファイルのレタッチはさすがにかったるい。レイヤーなんか作って作業した日には涙モノである。逆に1bitで済むのであれば、ファイルサイズは1.25MB、これなら旧式のマシンでも苦にならないサイズである。
過不足のない適切な色数にしなければ、結局は自分の時間が無駄になっていくだけ、ということだ。
成書に記載されている白黒の線画や心電図、筋電図などの取り込みは、1bit(白黒2色)でOK。それ以上色数を増やしても、紙面の汚れなどがノイズとして出てくるだけで、何のメリットもない。どうせなら前述のように解像度を上げよう。ただ、紙面の汚れがひどくて1bitでは綺麗な取り込みが出来ないときは、逆に8bitで取り込んだ後に Photoshop などのソフトで処理して、最後に1bitにする、という手もある。
レントゲンやCT、MRIなどの写真は全てグレースケール画像である。これを24bitフルカラーで取り込んでも何の意味もない。8bitグレーで十分である。さらに言えば、CTやMRIの画像はひとコマの画素数が512×512以内であることが殆どであるから、取り込み時にそこまで注意すれば、かなりのファイルサイズの節約(=作業時間の節約)になる。
註:だからといって、最初からひとコマ512×512で取り込んだりしては絶対にいけない。
何故って? やってみれば分かります。
カラー印刷の絵や図表などは、多くの場合、8bit(256色)の取り込みで十分である。よくよく注意してみれば、カラー印刷といっても、3〜4色の分版で刷っていることが殆どであるから、忠実に色を再現したい場合(これが実はとても厄介なことなのだが)を除けば8bitで十分。せいぜい15〜16bitもあれば事足りる。
カラー写真の場合は、24bitにせざるを得ない。階調幅の狭い写真であれば、15〜16bitでもよいのだが、経験上から言えば、24bitが望ましい。
結論:線画 = 1bit、レントゲン等 = 8bit grey、図表等 = 8bit color、写真 = 24bit color で取り込むと良い。
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2.色調の決定
一般論として言えば、暗いところで見るスライドは、暗めのバックに明るめの文字・線で構成するべきである。ディスプレイ上で見ると何となく品がないようにも見えるのだが、逆のパターン(明るめのバックに暗めの文字・線で構成)のスライドは、まったくもって見えにくい。ただ、具体的にどのような色を使うか、という問題については個々人のセンスや好みの問題であるからして、ここでは述べない。ただ一つだけ言及するならば、むやみに色数を増やさない方がいい、ということであろうか。
気をつけなければいけないのは、同じ太さの線でも、明るさやコントラストの設定によって太さが異なって見えることが往々にしてある、という点である。白い背景に引いた黒い線と、黒い背景に引いた白い線と、実は同じ太さであっても、後者の方が太く感じられるものである。
先に述べた線画や心電図・筋電図などの画像は、白黒反転させた方が圧倒的に見やすい。しかし、低解像度のデータを単純に反転させただけでは異様に太いペンで記録されたもののように感じられるであろう。前述の「線画は高解像度にするべきだ」ということのもう一つの理由はここにある。ディスプレイ上での「実寸表示」では線がかすれて見えない、数倍に拡大してやっと見える、という程度でちょうど良いくらいなんである。
したがってまた、むやみやたらと太い線を使って図表を作るのも考え物である、ということにもなる。強調したい事例など、線を太くするよりもコントラストを強めた方がより目立つ、ということもあるんである。
これについては、生まれ持ったセンスで解決する人もいるのであろうが、私のような人間にとっては、経験を重ねるしかない部分でもある。
問題になるのは後で印刷物等に転用する場合で、心電図や脳波などは再度白黒反転しなければならないのだが、ここでは多くは述べない。本来は、スキャンした元の画像ファイルを再利用して、ドキュメントとしては別個に作り直すべきであるが、暗い色調の台紙に明るい背景のスライドを貼り付けたようなドキュメントを作ることで逃げられることもある。そこまで考えるのであれば、色調の決定にあたっては細心の注意が必要である。
さらに問題になるのは、印刷物として転用する際にカラーからグレースケールに変換しなければならない場合である。グレースケールに変換した途端に、コントラストの低い、見にくい画像になってしまった、という経験をした方はいないだろうか? こういう用途が予想されるのであれば、単に色の違いだけでなく、明暗(濃淡)のコントラストがつくような配色を心掛けておかねばならない。
余談であるが、私が手がけ(させられ)ている総会のポスターやシンボルマークなども、この点について十分に配慮しないと、全く使いものにならなくなる可能性が高い。見た目にきれいな配色ならいい、というもんでもないんである。(嘆息)
結論:暗めの背景に明るめのドキュメント。コントラストは明暗(濃淡)でつける。
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3.サービスビューローに持ち込むとき
職場にフィルムプリンタが無い、あるいは職場のフィルムプリンタが故障している、といった事態に遭遇することもある。そのような場合、共同利用施設のフィルムプリンタを利用するか、フィルムプリンタを設置してある出力ショップ(我々にとって身近な例だと、カ○カ○カ○ラ 等)にファイルを持ち込んで、そこでフィルムに焼き込まねばならない。
その場合、注意すべきことが幾つかあるので、述べておきたい。
まずは、メディアの問題である。写真を貼り付けたようなスライドのファイルは、ほぼ間違いなくフロッピーディスクには収まらない。多くの諸兄・諸姉はMOディスクでファイルを管理していることだろう。128MBのMOであれば、ほぼ何処に行っても受け付けてもらえると思って良い。最近 流行りのZIP等は対応していないショップも多いようである。
さらに、ファイルを持ち込んだ後にも気を付けなければならない問題は多い。
主には、自分がデータ作成したのと同じソフトがあるか、自分が文書の中で用いたのと同じフォントがあるか、という問題である。さらには、プリンタドライバの問題(場合によってはかなり深刻な事態を惹き起こす)についても、触れておきたい。
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・ソフトの選定
せっかく作ったスライドのファイルを持ち込んでも、それを作製したのと同じアプリケーションソフトがサービスビューローに無ければ、何にもならない。当たり前のことだが、事前にそのアプリがあるかどうかを確認しなければならない。
無い場合、どうするか? これは結構深刻な問題であるが、いくつかの解決策が考えられる。
アプリも持ち込む: まずは、データファイルだけでなくアプリもMOにコピーして持っていく、という手段が考えられる。ただし、このような方法は、厳密には著作権の問題(使用許諾契約)に抵触する可能性もはらんでいる。また、Macで独自の機能拡張ファイルを使用するようなアプリケーションの場合は、それも持って行かねばならない。しかし、そのような機能拡張書類を勝手にシステムフォルダに入れるのを許容してくれるショップがあるかどうか、これも疑問である。Winの場合も同様の問題は発生しうる。
起動ディスクを持ち込む: となると、MOに起動システム自体を作って持っていく、ということまで考えなければならないが、起動システムを作るには多少の勘所が必要であろう。また、Winの場合、リムーバブルディスクからのブートが出来るのかどうか、という確認も必要になる。外付HDDを持ち込む、ということも考えられるが、Winの場合、外付のストレージデバイスからは(HDDであっても)ブートできない場合もあり得る。....結構面倒なんである。
後で印刷: 多くのフィルムプリンタドライバがサポートしている「後で印刷」オプションを利用して、データファイルではなく、プリントファイルを持ち込む、という手段もある。しかし、この為には、サービスビューローのフィルムプリンタ用のドライバを入手しておく必要がある。これについては、後段の「ドライバの問題」を参照していただきたい。
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・フォントの問題
スライドを作製する場合、フォントの選定には注意が必要である。多くのユーザは、TrueType(TT)フォントを利用していると思われる。これはこれで問題は無い。しかし、PostScript(PS)のレーザプリンタを利用している場合など、紙への出力にはPSフォントを利用したいところであろう。しかし、紙とフィルムでフォントを使い分けるのはいかにも面倒くさい。解決策としては、ATM(フォント)を用いる事くらいしかないと思われる。
註:WinのPSプリンタドライバの場合、スクリーンフォントとしてはMS明朝、MSゴシック、といったフォントを
代替使用することもあるようなので、問題は無いかも知れない。ただし、文字のウェイトなどが微妙に異なる
(かなり、という話もある。一般にWinのTTフォントはMacのそれに比してヒント情報などが少なく「粗い」という話もある。
が、わが輩は詳しく知らないし、ここでの本題とは異なるので、深くは触れないんである)ので、その点は注意が必要であろう。
ATMを使う: ATMを用いて、Ryumin-Light、GothicBBB-Medium といったATMフォントがインストールされていれば、Macのシステムに附属の細明朝体、中ゴシック体等は、ちゃんとラスタライズされてシャギーのない文字として出力されるはずである。
註:ただし、わが輩は、ATM3.8.x までの事しか知らない。
ATM3.9.x 以降のCIDフォーマットに対応したRyumin-Light、GothicBBB-Medium といったATMフォントを
モリサワが出荷したのかどうか、以前まで身近にいたモリサワフォントのユーザが転勤してしまったので、
知るすべが無いんである。しかし、ATM3.9.x 以降の場合、後述の平成系2書体が確実に利用できる。
Ryumin-Light、GothicBBB-Medium 以外のATMフォントとしては、平成明朝体W3、平成角ゴシック体W5 の2書体が最近は多用されている。低価格のPSプリンタには、この2書体を搭載したものも増えてきた。これならATM3.9.x 以降にも確実に対応しているし、Acrobat Reader あたりにもスクリーンフォントがバンドルされているはずである。また、Adobe Type Library(単体でも購入可能だが、IllustratorやPageMakerにもバンドルされている)を入手すれば、プリンタフォントもバンドルされているので、PSプリンタのフォント用HDDへのダウンロードも可能である。
さらには、ダイナフォントシリーズなどの安価なPS/ATM/TTフォントをセットで利用する、という手もある。
事前の確認は必要: ここまで書いておいて言うのもなんだが、使用するフォントについても、前項と同様の問題がある。せっかく書体に凝ったプレゼンを用意しても、焼き込む段階で使用する機種にそのフォントが無ければ、シャギーのかかった汚い文字にしかならない。
従って、システムに附属のフォント以外のものを用いる場合には、これまた事前の確認が必要である。
アプリ専用のフォントに注意: ここで特に注意すべきなのは、そのアプリ独自の、専用のフォントを用いるものの場合である。ウチの職場でファンが多いものを例に出せば、DeltaGraph が挙げられるだろう。DeltaGraph で折れ線グラフなどを作製した場合、記号として用いられる●や■や▲は全て、絵ではなく、DeltaSymbol というフォント(文字)である。
したがって、DeltaSymbol フォントがインストールされていないシステムにこれを持ち込んでも、●がJに、■はBに、▲はHに「文字化け」してしまうんである。
解決策は前項と同様: フォントの問題に関しても、解決策は前項と同様である。
すなわち、フォントを持ち込んでインストールするか、起動ディスクを持ち込むか、後で印刷するか、と言ったところであろう。
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・ドライバの問題
アプリやフォントの違いにまつわる問題の最もスマートな解決策は、前述の「後で印刷」オプションを用いることである。
この方法で作成された「プリントファイル(ColorFast の場合、こう呼ぶ)」は、フィルムに焼き込むイメージのビットマップデータであるから、アプリやフォントに依存しない。フィルムプリンタに接続されたパソコンに問題のアプリやフォントがインストールされていなくてもいいわけである。
職場の中に複数台のパソコンがある場合など、全てのパソコンの環境をまったく同じに保つことは〜専従の管理者でもいれば別だが〜不可能に近い。せめて、全てのパソコンにプリンタドライバを入れておけば、それぞれのパソコンで「プリントファイル」を作製することで、問題は解決されるんである。ただし、くどいようだが、プリンタドライバにも当然のこと著作権があるので、使用許諾契約書を熟読して、そのような利用が使用許諾契約に抵触しないことを確認するべきではある。しかし、多くのプリンタドライバは、その性格上、この様な利用形態を妨げないものが多いように思われる。
これを拡大すれば、共同利用施設やサービスビューローにあるフィルムプリンタについても、それが許されるなら、プリンタドライバを自分の環境の中にインストールしてしまえば全く問題は無い、ということになる。共同利用施設の管理者、あるいは、サービスビューローの責任者に問い合わせてみる価値はあるかも知れない。ただし「後で印刷」オプションの無いドライバをコピーしても御利益は薄い。せいぜい、用紙設定の手間が省けるくらいのものである。
註:今回はスライドの話であるが、DTPの場合は、こういう必要はないと思ってよい。
LaserWriter の用紙設定にしておけば、何とかなることが多い。
それでも、事前に印刷屋さんに確認するのが望ましいのは言うまでもない。
ゆめゆめ、万一の場合の責任をわが輩に取ってもらおうなどとは思わないで欲しいもんである。
最後に、このようなドライバのコピーが許諾されない場合どうするか、という点について改めて触れておきたい。
原始的な解決策は、前述のように、フォントを持ち込んでインストールするか、起動ディスクを持ち込むか、さもなくば事前に照会して使用可能であることが判明しているアプリ・フォントしか使わない、ということである。自分の環境を、共同利用施設やサービスビューロと揃える、という手もあるが。
さらに付言するなら、ドキュメント作成時の用紙設定ではプリンタドライバに依存せずに、焼き込む段階で「プリンタの用紙に合わせる」というオプションを持ったソフト(MS PowerPoint 他、いくつかある)を利用すれば、用紙設定に関するトラブルを回避できることにも留意していただきたい。ただし、最初にアスペクト比を正しく設定しておかねば、何にもならないが。
というわけで、話は最初に帰るんである。
まず初めに、仕上がりをきちんとイメージしよう。
マイスターたらんとする者は、素材収集の時点から仕上がりをイメージしなければいけないんである。
終わり。
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