研究テーマの紹介
@現在の研究テーマ
 私たちの研究室では、国内外における大動物 (ミニブタ・サル)を用いたトランスレーショルリサーチの中核拠点としての地位を確立し、特に「同種移植での免疫寛容誘導方法の確立」と「異種臓器移植の臨床応用を目指す」ことを最終的な研究目標として掲げています。この目標を達成するため、組織適合性抗原(MHC)確立クラウン系ミニブタを用いた各種同種移植実験、異種移植における超急性拒絶反応の標的抗原であるGal抗原を ノックアウトしたGalT-KOブタ、あるいはGalT-KOブタに更に補体制御などの遺伝子導入を加えた遺伝子導入GalT-KOブタをドナーとして用いたブタ・霊長類間の異種移植実験に着手し、すでに国内初となる数々の成果を挙げています。研究室を率いる山田が、これまで15年間米国で研究室を主催していた経験(ハーバード大学准教授、マサチューセッツ総合病院移植生物学研究センター主任研究員)と同種・異種移植大動物実験における免疫寛容誘導戦略に関する成果(Nat Med 2005、PNAS2004、2006、J Immunol 2008、Am J Transplant 2009)を始め100本を超える筆頭・責任著者としての英文論文)を柱に、私たちの研究室独自の戦略を加味した新たなTranslational Transplantation Researchを進めています。
 特に当分野の大きな特色として、海外で大動物実験の研修を十分に積んだ研究者が主導する活動体系が整備され、国内で日本独自の世界レベルの大動物実験を行うことが可能であることだけでなく、山田の米国での経験を活用した、海外研究施設との活発な研究協力体制、英語を主とした教育環境が整っていることが挙げられ、国内はもとより国外でも活躍できる人材の育成場所となる研究室となることを目指しています。
1.同種移植における臓器生着と拒絶のメカニズムの探究
前臨床実験として、免疫学的機序の詳細な検討まで可能とする大動物移植実験を行うため、国内唯一のMHC確立大動物である、鹿児島大学開発のMHC確立クラウンミニブタを用いた各種研究を行っています。
1)in vitro実験系での拒絶反応モニタリング方法の確立
免疫学的背景が一致したMHC確立動物を用いる大きな利点として、in vivo実験として重要な臓器生着・拒絶の機能的評価だけでなく、小動物と同様にin vitroでも拒絶反応の免疫学的評価が可能となり、詳細なメカニズムの検討を行うことができるということが挙げられます。短期生着だけでなく、慢性期にまで焦点をあてた大動物実験を推進するために必須でありかつ基礎データとなるin vitroでの免疫反応評価方法として、放射性同位元素を用いずに拒絶反応を細胞学的に評価する手法を確立しました (Fig1. Oku M et al. Transpl Immunol. 2008 Nov;20(1-2):78-82)。
2)in vivo大動物移植実験系や虚血再灌流障害モデルの確立
 (腎・肺・膵臓・膵島・小腸・心臓・肝臓移植等)
大動物実験in vivo移植実験を行うにあたり、移植実験手技の確立は必須ですが、更に重要なこととして、周術期から術後3-12か月にも及ぶ慢性期に至る実験を安全に行うことができる飼育体制、免疫抑制剤や抗生物質をはじめとする各種薬剤の投与体制を確立することが挙げられます。私たちの実験室では、腎臓、肺をはじめとして各種臓器を用いた移植慢性実験が可能な体制を整備し、虚血再灌流傷害反応を評価するモデル (Sahara H et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2010 Jun;139(6):1594-601)、あるいは短期間の免疫抑制療法投与下に、MHC完全不適合間の移植を行うことにより、均一な拒絶反応進展様式をとる腎移植(Oku M et al. Transplantation. 2012 Jan 27;93(2):148-55)や肺移植モデルを確立し(Sahara H et al. Transplantation. 2010 Dec 27;90(12):1336-43)、それらのモデルをもとにした一酸化炭素(CO) (Fig 2.およびFig 3)やHepatocyte Growth Factor (HGF) (Fig 4およびFig 5)による拒絶抑制効果を明らかにしています。現在以下示すように、MHCの相違や虚血再灌流障害が拒絶反応進展に及ぼす影響の評価、拒絶反応制御あるいは免疫寛容誘導戦略の開発へとつながる実験を、日本学術振興会基盤研究や、各種財団からの助成金をもとに推進しており、随時その内容を当HPでもアップデートしていく予定です。

2.クラウンミニブタ同種移植モデルにおける拒絶反応抑制および免疫寛容誘導戦略の開発
免疫抑制療法による新たな障害発生や医療費の増加を防ぐという観点から、移植医療推進の大きな課題となる免疫寛容誘導(免疫抑制療法を必要とせずに移植臓器が生着している状況)を目指した研究を行っています。
・MHCの相違や虚血再灌流障害が拒絶反応進展に及ぼす影響の評価
・HMGB1やthrombomodulinに着目した虚血再灌流障害や拒絶反応制御
・CO(一酸化炭素)を用いた新規拒絶反応制御療法および新規臓器保存法の開発
・HGFを用いた新規免疫抑制療法の確立
・胸腺若年化による免疫寛容誘導戦略
・小腸移植におけるドナーキメラ増強作用に基づく免疫寛容誘導法
3.ブタをドナーとした異種移植免疫寛容誘導戦略の開発
移植医療最大の問題点であるドナー臓器の不足を克服するための、最も現実的かつ有効な手段と考えられる異種臓器移植の臨床応用を目指す研究を行っています。
・GalT-KOブタおよび遺伝子導入新規GalT-KOブタの開発
・ミニブタ−霊長類間異種移植モデル(膵島、腎、肺等)における新規拒絶反応制御方法の開発