当教室について

当科では、周術期の患者さんの命を守り、 救急・集中治療に参加し、
疼痛緩和ができる臨床医、そして臨床に役立つ研究者の育成を目指して、
研修医の段階から質の高い教育が受けられるよう取り組んでいます。

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
先進治療科学専攻生体機能制御学講座
侵襲制御学分野鹿児島大学医学部麻酔・蘇生学講座

Professor

松永 明

はじめに

2023年4月より、鹿児島大学医学部麻酔・蘇生学教室教授を拝命しました松永明です。当教室は、1969年(昭和44年)に初代教授吉武潤一先生によって開講され、以降、第2代教授吉村望先生、第3代教授上村裕一先生、第4代教授森山孝宏先生によって継承されてきました。臨床においては、「安全な麻酔」、教育においては、「どんなに忙しくても教育に手を抜いてはいけない」、研究においては、「リサーチの灯は片時とも消してはいけない」をモットーに、これまで臨床・教育・研究に取り組んできました。

麻酔科医の役割は、さまざまな手術侵襲により刻々と変化する患者の状態を把握し、適切な治療を行い、患者の生命を守りぬくことです。しかし、現在は手術室だけではなく、手術麻酔で培われた全身管理や疼痛管理の知識および技術を生かして、救急・集中治療、ペインクリニック、緩和医療などの分野に麻酔科医の活躍の場があり、今後もそのニーズは拡大すると思われます。そのため、幅広い分野で活躍できる麻酔科医の育成を目標に教室を運営していきたいと考えています。

プロフェッショナルな麻酔科医の育成

鹿児島大学医学部麻酔・蘇生学教室は、離島を含め21の関連施設を維持し、鹿児島県の地域医療を支えています。大学病院が鹿児島県の医療の「最後の砦」であるために、多種多様な疾患の手術麻酔を経験し、幅広い知識と技術を修得することができます。まずは、プロフェッショナルな麻酔科医となるための最優先事項である麻酔科専門医資格の取得を目指します。

麻酔科専門医取得に続き、心臓麻酔、小児麻酔、産科麻酔、神経ブロックなどの麻酔科内専門領域や、救急・集中治療、ペインクリニック、緩和医療などの麻酔関連領域において、若手麻酔科医がサブスペシャリティの資格の取得できるようにサポートします。心臓麻酔は国立循環器病センター、小児麻酔は福岡市立こども病院、産科麻酔は埼玉医科大学総合医療センター産科麻酔科、ペインクリニックはNTT東関東病院ペインクリニック科と、それぞれ国内最先端の施設で研修できるように連携しています。神経ブロックに関しては、国内有数の症例数を有する名古屋大学病院で超音波ガイド下神経ブロックを研修した先生を中心に2~3か月毎にワークショップを開催しています。救急・集中治療に関しては、一貫した術中術後管理を修得するために鹿児島市立病院集中治療部での研修を必修とし、また、当教室の出身の垣花教授が主催する鹿児島大学病院集中治療での研修も可能です。緩和医療に関しては、当教室のスタッフが大学病院緩和ケアチームのメンバーに加わり、ペインクリニックとも連携して痛みの治療を中心に終末期医療に携わっています。このように、幅広い分野で活躍できるプロフェッショナルな麻酔科医の育成を目指しています。

基礎と臨床の融合を推進

研究に関しては、臨床現場で生じた問題点を基礎の教室の協力を得て解決するとともに、基礎の教室での研究成果を臨床に応用する。そのような双方向に研究が発展するテーマを見つけ、基礎の教室と協働で研究を行うことで、研究の活性化に取り組んでいます。現在、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科生化学・分子生物学教室の奥野教授の下で、Ca2+濃度依存性に強度が増加する蛍光タンパク質を大脳に発現させ、その蛍光強度を測定することでリアルタイムに神経活動を定量化し、神経活動変化と疼痛の関係や神経活動変化と麻酔の関係を解明する研究を行っています。

麻酔科医へのロードマップ

教育に関しては、臨床実習およびクリニカルクラークシップにおいて、中心静脈穿刺や硬膜外カテーテル挿入などの様々な手技のシミュレーション教育に加え、マスク換気、静脈ライン確保、気管挿管などの学生に許容された医行為実習を安全に実地できるように教室員全員できめ細かく指導しています。また、研修医においては、救命や麻酔に必要な基本手技を修得するだけではなく、呼吸・循環・輸液の管理などの全身管理の実践に直接触れることが一番重要な学習と考え、担当臨床医によるマンツーマン指導を目標にしています。このように、医学生から研修医までのすべての過程において、麻酔科医を目指す教育を行っています。

働きやすい麻酔科

麻酔科は女性医師の多い診療科で、当教室でも女性医師の割合は40%を超えています。そのため、女性医師のキャリア支援に力を入れ、育児中であっても勤務継続ができるように配慮し、出産後の復職率は96%とほぼ全員が復職しています。このように診療を継続することで、当教室の女性麻酔科医の70%が専門医取得・維持しています。しかし、今後は、医師の働き方改革も導入されるため、育児休業取得を希望する男性医師も増加してくると思います。既に昨年、当教室の関連病院の男性麻酔科医が数か月間の育児休業を取得しました。そのため、タスクシフトの推進やシフト勤務の導入、マンパワーの充実を図るなどして、教室員の全てが仕事だけではなく、家族との時間や趣味の時間を持てるようなワークライフバランスを実現した生活が送れるように配慮していきます。

麻酔科医に対するニーズはますます増大し、まだまだ麻酔科医は不足しているのが現状です。学生、研修医の皆さん、プロフェッショナルな麻酔科医を目指して是非我々と一緒に働きましょう。