当教室について

当科では、周術期の患者さんの命を守り、 救急・集中治療に参加し、
疼痛緩和ができる臨床医、そして臨床に役立つ研究者の育成を目指して、
研修医の段階から質の高い教育が受けられるよう取り組んでいます。

上村 裕一

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
先進治療科学専攻生体機能制御学講座
侵襲制御学分野鹿児島大学医学部麻酔・蘇生学講座

Professor
上村 裕一

YUICHI KANMURA

はじめに

麻酔の歴史は、今から約160年前の亜酸化窒素・エーテルなどの吸入麻酔薬の発見に始まります。これは偶然見つかったものではなく、手術に伴う痛みを取りたいという当時の医師たちの強い願いによって、探し求められた結果です。

吸入麻酔は意識を失わせることにより、鎮痛・鎮静状態を作り出しますが、同時に呼吸・循環という人の生命に関る重要な機能も抑制します。そのため、麻酔科医は麻酔を行うだけでなく、周術期の全身管理、蘇生に携わらなければならず、その意味で麻酔科だけではなく、麻酔科・蘇生科であるのです。従って麻酔科・蘇生科の医師は麻酔だけでなく全身管理の専門家であり、集中治療や救急医療で重要な役割を担っています。そしてこの知識と技術はすべての科の診療にも役立ちます。

また、痛みの専門家として痛みに悩む患者さん(術後疼痛・慢性疼痛・癌性疼痛)の主治医として疼痛緩和医療も行います。当教室では、周術期の患者さんの命を守り、救急・集中治療に参加し、疼痛緩和ができる臨床医、そして臨床に役立つ研究者の育成を目指して、研修医の段階から質の高い教育が受けられるよう取り組んでいます。

臨床

当麻酔・蘇生学教室が担当している臨床領域は、手術室での麻酔、痛みの治療(ペインクリニック)、集中治療、救急医学の4分野です。麻酔に関しては大学病院だけでなく、鹿児島県・宮崎県内の23の関連病院で様々な科の麻酔を担当し地域医療に大きく貢献しています。

ペインクリニックは県内の7病院で診療を行い、痛みに悩む患者さんの治療を行っております。集中治療・救急医学については、大学病院では平成23年5月に当教室出身の垣花泰之教授が初代教授として開設された救急・集中治療医学講座が担当されていますが、関連病院では当教室の麻酔科医が術後患者さんや重症患者さんの集中治療室での管理を担当することが多く、また救急外来で蘇生や救命処置を行っている病院もあります。

またいずれの領域でも、最先端の技術・知識を習得するために国内外の施設へ短期・長期の外国留学・国内留学を積極的に行っています。

研究

麻酔は呼吸・循環など全身のあらゆる機能に影響を与えるため、細胞レベルから臓器レベルまで麻酔薬の及ぼす作用は、麻酔科の重要な研究課題です。それ以外にも、ショックや呼吸不全などの病態生理、そしてその治療に関する研究も行っています。また、痛みの発生機序に関する基礎的な研究は当教室の主要な研究テーマになっています。当教室では基礎的なレベルの高い研究を行うために学内の基礎医学講座と連携をとり共同研究も積極的に推進しています。

教育

現在全国で麻酔科医の不足が大きな社会問題となっています。レベルの高い麻酔科専門医を育成することが麻酔・蘇生学教室の重要な使命です。そのためには医学部教育で多くの医学生に麻酔・蘇生学の知識・技術を教え、この領域に関心を持ってもらうことが第一歩です。当教室では臨床実習に力を入れており、スタッフだけでなく臨床担当医も熱心に教育にあたっています。また、初期研修医教育では必修科目の救急の一部としての麻酔科研修が認められており、救急医療に必要な静脈ライン確保、マスク換気、気管挿管、循環管理、呼吸管理等を多く経験できるよう、スタッフがマンツーマンで行うようにしています。

さらに、麻酔科を選択科目とした研修医にはさらに多くの手技(動脈ライン確保、中心静脈ライン留置、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔等)も、スラッフの指導のもと経験させています。麻酔科専攻医の教育は、鹿児島大学病院麻酔科専門医研修プログラムとして、県内の16の関連病院、県外の4の関連病院で研修を行い、4年間で専門医を取得できる体制を整えております。また、心臓麻酔は国立循環器病研究センター、小児麻酔は福岡市立こども病院での研修も可能です。

教室の方針

当教室の使命として、安全な麻酔を多くの患者さんに受けていただくことが第一ですが、教室員の幸福度も重要と考えています。現在女性医師の比率が増えて産休・育児休暇で臨床を離れなければならない女性医師、育児と家事と仕事を両立しなければならない女性医師、そして両親の介護を行わなければならない医師も急増しています。

このような医師が麻酔科領域の医療が続けられるような体制を作ることが、麻酔科医自身にとってだけでなく、社会にとっても重要な課題だと考え、いろいろな対策を行っています。地域社会の期待に応え、そして教室員が楽しく幸せに仕事を行えるような教室を目指しています。