理学療法学関連国際学会に参加して

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鹿児島大学大学院 保健学研究科 博士後期課程  秦 一貴

2013年9月6日から9月8日にかけて台湾にて開催されたWCPT-AWP & ACPT Congress 2013(世界理学療法連盟アジア西太平洋地区学会およびアジア理学療法連盟学会2013)および2015年5月1日から5月4日の期間でシンガポールにて開催されたWCPT Congress 2015(世界理学療法連盟学会2015)に参加し研究発表を行いました。

私が博士前期課程で所属していた研究室では、バーチャルリアリティ技術をリハビリテーションに応用することを研究室全体の大きなテーマとし、メンバーそれぞれが興味ある一分野を担当して研究を進めております。当時、私はジェスチャ認識機能を持つ家庭用ビデオゲーム機器を応用して、マーカレス・モーショントラッキング機能を持つ簡便な3次元動作解析装置を開発する研究に携わっていました。目標とする結果が出ますと、これまでは国内の学会で発表し研究成果を報告してきましたが、私を含め複数のメンバーの研究に良い結果が出たことから、国際的な視野を養うことで研究テーマの意味を再認識するという目的で、まずはアジアで開かれる国際学会で発表することになりました。日本で開催された国際学会に参加したことはありましたが、国外での発表は初めての経験ということもあり、英語のポスターや発表用の原稿を作成し、英語での質疑応答の練習を行い、海外旅行に必要な準備もして万全の態勢で学会に臨みました。

 

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台湾へは鹿児島大学保健学科から私を含め、研究室指導教員の福留先生と研究室所属の大学院生の西さん、平田さん、そして保健学科教員の榊間先生、木山先生、および大学院生の長谷場先生のメンバーで出発しました。学会の前日の夜は研究室のメンバーで食事をしながら発表についての打ち合わせを行い、海外で発表することへの期待で胸を膨らませていました。学会会場は台中市内から車で15分程のところにある「南山人寿教育訓練中心(Nan Shan Education & Training Center)」という施設でした。会場のあちらこちらから聞こえてくる台湾語(北京語)、英語、韓国語、そして日本語などに包まれながら、アジアで開かれた国際学会に参加していることへの実感が湧き上がりました。軽食や飲み物がフリーで提供されるラフな雰囲気の中、多くの興味深いポスターを目にしながら1つの発表に目が留まりました。バーチャルリアリティを日常生活動作の練習に応用するという我々のテーマと共通する内容でした。自然と質問がしてみたくなり、自分の拙劣な英語に対して発表者は流暢な英語で丁寧に答えて下さいました。いよいよ自分の発表時間となり、ポスターの前に立ちました。やがて一人の女性から英語でいくつかの質問を頂きました。それは事前に準備しておいたものとは全く異なる内容であったため、その場で英語を何とか考えようとしましたが言葉が出てきませんでした。しかし、そのような私に対し真剣に耳を傾けて下さり大変嬉しく思いました。自分の伝えたいことが英語だと半分も伝わらないもどかしさを感じながら、研究成果をより多くの人に伝えたいという自分の思いも再認識することができました。

台湾での学会発表から約2年後、私は研究テーマである動作解析についてより深く探究するため、博士後期課程に進学し、筋骨格モデリングシステムを応用して動作中の関節に作用する応力の研究を行っていました。新たな研究成果をまとめることができ、今度はシンガポールで開催された国際学会で発表することになりました。前回の台湾ではアジアの国々が中心の学会でしたが、シンガポールでは世界各国からの研究発表を見ることができます。前回の経験から英語でのコミュニケーション能力の不足を実感していましたが、それ以上に交流することの楽しさも知りました。シンガポールではアジアのみならずヨーロッパの国々の方ともコミュニケーションすることを、私自身の目標としました。

 

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今回は私を含め、保健学科教員の木山先生と研究室所属の大学院生の西さん、川井田さん、そして大学院生の長谷場先生、大塚さんのメンバーでシンガポールに出発しました。目前に広がる美しく緑化された街並みには風水に彩られた近未来的な高層建築が整然と立ち並び、成長を続ける洗練された都市景観に圧倒されました。学会会場は市内の中心街に位置する「サンテック・シンガポール国際会議展示場(Suntec Singapore International Convention & Exhibition Centre)」という施設で、広大なフロアーには巨大なディスプレイが輝いていました。自由な服装や民族衣装に身を包んだ世界中の方が英語で活発な議論をし、展示ブースには世界中の企業が最新の医療機器のデモンストレーションをしていました。台湾の時とは全く違った雰囲気に少し戸惑いながら、世界中の研究発表を見聞することができ、我々鹿児島大学以外にも日本からの発表が多いことに驚きました。最先端のリハビリテーション技術に関する内容、女性や高齢者に着目した内容、また、戦争で四肢を失った方への支援に関する内容もあり、非常に興味深く感じました。私は、自分のポスター発表を通じて、クロアチアで教師をされている方とコミュニケーションをする機会を得ることができました。クロアチアではリハビリテーションや理学療法研究のための資金が不足しているそうで、日本では最新の機器が充実した研究施設や潤沢な研究資金があって羨ましい…と思われているようでした。自分の研究内容や鹿児島大学での研究の状況、また、日本での理学療法の現状についてできる限りの英語を駆使して伝えようとする私に、笑顔を見せながらゆっくりと丁寧な英語で答えて下さいました。お互いに、これからも理学療法発展のため研究を続けていきたいということで固い握手を交わし、最後は一緒に記念撮影をすることもできて大変感動しました。今回の学会を通じて交流することの大切さを改めて知ると同時に、英語でのコミュニケーションの難しさを実感することができ、次回の学会発表に対する新たな目標ともなりました。

私の研究成果は、関係する多くの方々のご協力のもと実現したものです。その成果が社会に貢献し幸福へ繋がるきっかけとなることを心より願っております。今回、国際学会に参加し異文化コミュニケーションを通じて、そのことを強く感じることができ、大変意義深い経験になったと思います。そして、このような機会に恵まれたことを心より感謝いたします。