鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学

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Department of Cardiovascular Medicine and Hypertension, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

診療について

医療関係者様へ:当科が専門的に行っている疾患・治療

医療関係者様向け

心臓リハビリテーション

心臓リハビリテーションは、心疾患患者の身体的、心理的、社会的機能を最適化させるだけでなく、基礎に存在する動脈硬化過程の進行を安定化、遅延あるいは退縮させることにより、罹病率、死亡率の低下を目的とした協調的で多面的なインターベンションを意味すると定義され、虚血性心疾患や開心術後、心不全、末梢動脈疾患などが適応疾患となります(表1)。心臓リハビリテーションの中心的な役割を担っているのは運動療法ですが、薬剤の管理や栄養指導・管理、禁煙指導、復職支援など、医学的・社会的な管理も重要であり、医師だけでなく、看護師や理学療法士、作業療法士、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなど、様々な職種により包括的な治療介入を行うことが必須になります(図1)。

運動療法について

はじめに心臓リハビリテーションの中心的な役割を担っている運動療法について概説します。超急性期の段階から、ベッド上での理学療法士による他動的な運動を開始し、離床をはかります。歩行ができるようになったら、血圧や脈拍に注意しながら徐々に歩行距離を延長していき、200~300m歩行が可能となったら、リハビリテーション室でのリハビリに移行します。リハビリテーション室では、モニター監視を行いながら自転車エルゴメーターやトレッドミルを使用した有酸素運動レベルの運動を行います(図2)。その際に運動の種類や強度、頻度について検討し、運動処方を行います。

運動の強度の決定は、いくつか方法がありますが、心肺運動負荷試験が施行可能な症例では、有酸素運動の指標となる嫌気性代謝閾値(Anaerobic Threshold : AT)を測定し運動強度を決定します。ATは、有酸素運動の指標であり、有酸素運動下では内分泌代謝系に進行性の変化をきたさず、血圧や脈拍の急激な上昇を認めないため、AT以下の運動は安全に施行することができます。

心肺運動負荷試験は、特殊な装置が必要で、準備もかかることから、全例に行うことができないこともあります。その場合の運動強度の決定方法として、自覚的運動強度であるBorg指数(表2)を用いることがあります。Borg指数は、自覚症状を6~20の数値で表したもので、Borg指数13の時の運動強度はAT時の運動強度と相関するとされ、Borg指数11~13の運動強度で運動を行います。当院では、自転車エルゴメーターを用いて1分間に5ワットずつ増加する漸増運動負荷試験を行い、1分ごとにボルグ指数を聴取し、Borg 13を目安に運動強度を決定しています。

運動耐容能が低下しており、運動負荷試験ができない場合は、心肺機能の低下だけではなく、筋力の低下や歩行バランスの悪化により運動耐容能が低下していると考えられます。そのため、歩行が可能であれば歩行訓練、歩行が難しい場合は下肢の筋力増強や立ち上がり訓練を中心に行いますが、個々によって運動耐容能が大きく異なるため、日常生活に必要な動作に対するリハビリテーションを行います。筋力増強の目的にゴムバンドやEMS(電気筋肉刺激)を用いた筋力トレーニングを行うなど、理学療法士を中心として様々な工夫をして運動プログラムを作成いたします。

心疾患の疾病管理

心疾患患者に対する運動療法は有効な治療方法であり、運動耐容能を向上し、予後を改善することが明らかとなっていますが、それだけでは必ずしも再入院の予防につながりません。再入院の予防については、患者だけでなく、家族も含めた疾病管理プログラムを実践することが有用です。疾病管理プログラムとは、医師・ 看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・訪問看護師などの多職種チームが入院中から退院後にわたり医学的評価・患者教育・生活指導を包括的かつ計画的に実施して再入院抑制を含む予後改善を目指す中期~長期にわたるプログラムです。当院では、多職種からなる心臓リハビリテーションチームによるカンファレンスを開催し、患者さんの状態や問題点を共有し、看護師による生活指導、理学療法士による運動指導、薬剤師による服薬指導、管理栄養士による栄養指導など、より良い患者教育を目指して診療を行っております。

外来心臓リハビリテーション

外来心臓リハビリテーションも積極的に取り入れて、再発のないように努めることも重要になります。外来心臓リハビリテーションでは、運動療法前は、自覚症状を含めた問診、体重・血圧・脈拍の測定、頸静脈怒張や浮腫の有無の評価、運動中の心拍応答や呼吸困難の評価ができるため、状態悪化を早期にとらえることが可能となります。また、医療従事者と患者の間でコミュニケーションをとる時間が確保されるため、治療アドヒアランスの状況を把握することができ、セルフケアの動機づけができます。しかし、疾病管理プログラムとしての役割を十分に果たすことができるにもかかわらず、入院中はリハビリを行っていても外来で心リハを継続的に行える症例は必ずしも多くありません。

今後、より多くの患者さんに心臓リハビリテーションの恩恵を得られるように努めていく必要があります。