鹿児島大学法医学

鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科
健康科学専攻 社会・行動医学 法医学分野

お知らせ

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科法医学分野で法医解剖を受けられた方の遺族の方々へ:「研究課題名:浴室内突然死(入浴死)の発生を予防するためのアラート開発」

2024年1月4日 

 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科法医学分野では,以下の研究を実施しております。この研究は,県警が取り扱った捜査資料の一部を抽出して行う研究です。このような研究は,文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の規定により,研究内容の情報を公開することが必要とされております。この研究について詳しくお知りになりたい時や,研究への参加を希望されない場合は下記の「お問い合わせ先」へご連絡ください。

【研究課題名】
 浴室内突然死(入浴死)の発生を予防するためのアラート開発

【研究の目的】
 浴室内突然死(入浴死)は主に65歳以上の方に多く発生することが知られており,高齢社会を背景に年々増加傾向にあります。入浴死者数は突然死全体の10%以上に相当し,全国で年間約1万4千件(交通事故死者数の3倍以上)と報告されています。しかしその発生機序は未だ明らかになっておらず,現時点では冬季に暖かい部屋から寒い脱衣所及び浴室内,そして温かい浴槽内へと移動することで血圧が急激に乱高下することが原因ではないかと想定されています。そのため,入浴死発生の予防には個々人の努力が必要となっています。本研究では,一人でも多くの入浴死者数を減らすために,検案や法医解剖で得られた入浴死例のデータを解析することで入浴死が発生しやすい環境温度を特定し,毎日の気温情報から入浴死発生警報を鳴らすシステムを構築することを目的としています。

【研究の方法】
1)入浴死のデータ解析
2006年~2019年までの間に鹿児島県内及び宮崎県内において県警が取り扱った入浴死4000例のうち,発生日(入浴日)が判明している例について,入浴死発生の疫学的特徴(①年齢,②性別,③発生日時,④死亡場所(自宅,温泉,銭湯,その他),⑤発見場所(浴槽内,洗い場,脱衣所),⑥発見時の状況,⑦入浴前の飲酒の有無,⑧既往歴,⑨独居・同居の別,⑩死因,⑪溺没の原因,⑫浴室設備,⑬給湯器の設定温度 等)を解析し,入浴死の危険因子を同定します。さらに,公開されている気象データを参考にして,入浴死発生場所における発生当日の環境気温(最高・最低・平均気温,日内気温差,前日との気温差)を調査し,各地域(市)別に入浴死の発生頻度が統計学的に有意に高い各環境気温を特定し,入浴死データベースを作成します。

2)ホームページによるアラート
利用者が法医学分野のホームページ(URL: http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~legalmed/)にアクセスした際に,アクセスポイントにおけるその日の環境気温(最高・最低・平均気温,日内気温差,前日との気温差)を自動的に取得させ,上記入浴死データベースに基づいてその気温が入浴死の発生しやすい温度と判断された場合,「入浴死の危険大」とアラートを発信するシステムを構築します。また,ホームページには天気予報のように地図上に各地域の入浴死の危険度を表示したものを公開し,毎日の気象データを基に自動更新されるシステムを構築します。

3)LINEによるアラート
現代社会において世代を越えて広く浸透しているコミュニケーションアプリであるLINEを利用してスマートフォンやタブレットから手軽にアラートを発信するシステムを構築します。LINEの機能の1つであるMessenger APIを利用し,鹿児島大学法医学LINEアカウントに鹿児島県の入浴死発生状況に関するChatbot機能(人工知能を活用した自動会話プログラム)を持たせます。具体的には,利用者が鹿児島大学法医学LINEアカウントと「友だち」になることで,「霧島」等の市名をLINE上に打ち込むだけで,入浴死が発生しやすい気温や,その日の気温を検索することができるサイトを自動的に返答するというシステムを構築します。

4)マスメディアによるアラート
上記2),3)のように利用者が情報を能動的に得るだけではなく,ラジオ,テレビ等のマスメディアに天気予報ならぬ「入浴死発生予報」を公開し,情報を受動的に得ることができる手段を検討します。

【研究期間】
研究実施許可日 ~ 2026年12月31日

【対象となる患者さん】
2006年1月1日から2019年12月31日の間に県警が取り扱った捜査資料のうち入浴死事例のみ抽出された資料が本学に保管されている方。

【試料や診療録(カルテ)から利用する情報】
情報:捜査資料,法医解剖結果,検査データ

【研究組織】
この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示すとおりです。
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 社会・行動医学講座 法医学分野
教授 林 敬人

【試料・情報の管理責任者】
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科長 橋口 照人

【個人情報の取り扱いについて】
 鹿児島大学の疫学研究等倫理委員会に承認を受け,法医学分野の管理下で,研究で使用する情報を個人が特定されないように加工します。また、研究成果は学会や学術雑誌などで発表することがありますが,その際も個人を特定できる情報は使用しません。

【研究の資金源等、関係機関との関係について】
この研究は,鹿児島大学大学院医歯学総合研究科法医学分野の研究費(自己収入)で実施します。この研究は,研究者が独自に計画し,実施します。企業等の第三者機関からこの研究のための資金提供や労務提供は受けていませんので,利害の衝突は発生しません。

【参加を希望しない患者さんへ】
 この研究に参加を希望されない場合は,下記問い合わせ先までご連絡ください。

【問い合わせ先】
〒890-8544
鹿児島市桜ヶ丘八丁目35番1号
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科社会・行動医学講座法医学分野
教授 林 敬人
電話:099-275-5313
Fax:099-275-5315