ベストティーチャー最優秀賞

奥野 浩行

氏名:奥野 浩行
所属:医歯学総合研究科 生化学・分子生物学分野
「授業に対する心がけや創意工夫を行っている点などについてのコメント」

 

私は主に1年次の学生の授業を受け持っておりますが、大学教員が学部学生、特に1年次学生に対して果たすべき役割の一つは、「受動的学習」から「能動的学習」への意識の変革を助けることだと考えています。大学の授業は高校までとは異なり、自主的な学習を前提にして進められます。つまり、授業で教えられたことだけを理解し覚えればよいわけではなく、授業内容を基に自ら発展的に疑問や課題を見つけ、それらに対する答えを見つける作業が必要となります。「受動的学習」から「能動的学習」への意識改革を進めることにより、大学の学びで必要となる “自ら知識を広げていくプロセス”を習慣化することができるのだと思います。このプロセスは、自分で調べるだけでなく、友人や先輩、教員に聞いたり議論したりすることも含みます。

ではどのようにしたら能動的学習への意識を持ってもらえるのでしょうか。私は授業で以下のような工夫を行っています。まず、能動的学習の原動力となる知的好奇心を刺激したいとの思いから、私はときどき教科書の範囲を少し超えた内容の授業や課題・レポートを課すことがあります。また、1、2年次の学生には少し挑戦的ではありますが、英文の原著論文を読むことは教科書に載っている事柄が研究で得られた結果に基づくものであることを実感できるための良い体験だと思っています。さらに、本学あるいは他大学の第一線の研究者を招いて特別授業を開催することもあります。このような教科書にはまだ載っていない“新鮮な”研究事例に接することにより、学生が医学研究を身近に感じ探求心をもつことで能動的学習へとつながることを期待しています。

ベストティーチャー賞

小林 裕明

氏名:小林 裕明
所属:医歯学総合研究科 生殖病態生理学分野
「授業に対する心がけや創意工夫を行っている点などについてのコメント」

 

私は医学生向け授業の最初に講義・実習に参加する心構えや態度(身だしなみも含む)を説いています。将来、患者に寄り添い安心感を与えられる医師や、高い倫理観と探求心をもって医学研究を遂行する研究者になって欲しいと願うからです。「医師は患者さんの命を預かる職業ですので、病気で不安いっぱいの患者さんに寄り添い心のケア含めて治療できないといけません。
患者さんから感謝される喜びをモチベーションにできる限り、あなたはまっとうな医師に育っていけるでしょう」、「だらしない態度で授業を受ける医学生を見つけた時は叱責します。学びの場にきちんとした態度で臨むのは最低限の礼儀でありマナーです。
患者さんから信頼を得る入り口は礼儀正しい身だしなみや態度です。医学部に入学した時から将来の医師としての自覚を要求されることを今のうちから知っておいてください」、「医師には患者さんに安心を与えるための優れたコミュニケーション能力が必要です。コミュニケーションには、言葉によるバーバルコミュニケーションと言葉を使わないノンバーバルコミュニケーションの2種類があり、通常の意思疎通の7割は後者により行われています。
患者さんに信頼してもらうためには優しい笑顔などのノンバーバルコミュニケーションが非常に重要となります」、「出産は夫婦にとって結婚式とならぶ大きな人生のイベントです。産婦人科医は安全な出産を導くだけでなく、結婚式場のスタッフの様にそのイベントを心から祝福し盛り上げる役割もこなせないといけません」などの言葉で指導しています。

以上を医学生に要求するからには、自分の講義・実習指導も学生に“寄り添う”ものでありたいと思いながら、長年、医学教育に関わってきました。例えば臨床実習中に行う講義では、私が長年、臨床試験として取り組んでいた妊孕性温存手術を受けた実際の子宮頸がん患者さんが術後に妊娠し、帝王切開で待望の赤ちゃんが誕生するまでの過程を、患者さん承諾のもと作成したビデオ入りスライドを用いて解説しています。
このような臨床の現場を“ストーリー化”して見せる授業は大変好評で、皆身を乗り出して受講してくれます。コロナ禍の影響でWeb講義が増え、学生たちとFace to Faceで話できる機会は減りましたが、頂いた賞を励みに今まで以上に学生のためになる講義を追求していきたいと思います。

鹿児島大学
鹿児島大学医学部
鹿児島大学病院
附属施設等