ベストティーチャー最優秀賞

下堂薗 恵

氏名:下堂薗 恵
所属:医歯学総合研究科 リハビリテーション医学分野
「授業に対する心がけや創意工夫を行っている点などについてのコメント」

 

このたびの「令和2年度医学科最優秀ベストティーチャー賞」受賞は、私には身に余る光栄なことであり関係の皆様に心から御礼申し上げます。今回、5、6年生への総合講義と臨床実習の評価が高かったと伺いましたので授業を振り返ってみました。

1. リハビリテーション科の総合講義
総合講義は、国家試験対策と共に、その科目の“最終講義”に位置づけられます。2020年5月には、新型コロナ感染症拡大のため急遽、遠隔授業となりました。当時その経験がなかった私は躊躇しましたが、教室の同僚のお陰でこれまで当教室主催の学会等で使用した機器をフル活用し、当教室“配信スタジオ”から双方向性の授業を行うことができました。工夫点は以下の通りです。
1) 講義の数日前にmanabaにて過去問を配布し、事前に目を通すように連絡。
2) 講義当日“respon”より学生が回答。
3) 全体の正答率や誤答の傾向を両者が把握しつつ解説。
4) “ホワイトボード投影型のスクリーン”を活用し、 問題文を学生と共に解釈しながら回答を導くスタイルを実現でき、加えて当科特有の動的な要素を、講師が体現し、それを別カメラで同僚が撮影、提示しました。

2. リハビリテーション科における「診療参加型臨床実習」の推進
当教室では、主にリハビリテーション病棟の入院患者を主治医と共に担当します。前半には、多彩な心身の障害に悩む患者の疾患や障害を把握するための心構えや診察手技を教員が伝授し、学生間で実践した後に患者の診察を行います。中間評価として小テストと回診、最終評価として指導教員による試問とレポート(診療録)評価を行っています。
学生には診療チームの一員として、患者の機能回復の進捗を確認し、「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(ICF)に基づいて障害とその対策を記録、発表することを求めています。そのためには、患者の機能障害や、病棟の日常生活活動における食事、更衣、移動動作などを自身で評価し、加えてチームの多職種から情報を集めることが必要です。
回診では、学生が患者の機能面、例えば、「麻痺の回復度」をその場で手際良く診察した上で、患者を前に説明することを求めています。その際は患者の立場に寄り添い、入棟当初と比較した改善点や患者が日常の訓練で努力している点を必ず織り込んで敬意をもって説明するように指導しています。

ベストティーチャー賞

三井 薫

氏名:三井 薫
所属:医歯学総合研究科 遺伝子治療・再生医学分野
「授業に対する心がけや創意工夫を行っている点などについてのコメント」

 

この度は、令和2年度鹿児島大学医学部医学科「ベストティーチャー賞」という素晴らしい賞をいただき、ありがとうございました。大変嬉しく励みになりました。また、私が今回賞をいただくことができたのは、さまざまな方のサポートを受けてのことと思っております。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

当分野で担当する「解剖学Ⅰ」は、さまざまな組織/細胞についてその形や役割を理解する必要がありますので、“どのような授業をしたら学生は理解できる/理解が進むようになるだろうか”と思案しながら毎回ブラッシュアップしています。講義期間に学ぶべき内容は広範囲に渡ることから、ただ漫然と授業に出席しているだけでは十分に理解できないと考え、学生に対して、授業前日までには講義資料を配付して教科書と共に一読するよう伝えたり、manabaの小テスト機能を使って授業前の予習を兼ねた宿題を課したりと、予習・復習(自己学習)を促すようにしました。また他科目(解剖学Ⅱや生理学、あるいは臨床科目など)との関連にも触れ、解剖学Ⅰのみで完結するのではなく、他の科目も意識した学習が重要であることを伝え、学生の興味を引き出せるような授業になるよう試みました。

令和2年度は新型コロナ感染症の影響でオンライン授業への移行となったことから、Zoomによるオンライン授業マニュアルを作成し、慣れていない学生に対してスムーズに遠隔授業を行うことができるような対策を取りました。対面授業の代替であるという意味合いから「オンライン授業はビデオオンで参加」というルールは学生からは賛否ありましたが、他の学生も一緒に授業に出席していると意識してもらう機会がつくれたと思います。

今回いただいた賞を励みに、今後もよりよい授業ができるよう取り組んでいきたいと思います。

嶽﨑 俊郎

氏名:嶽﨑 俊郎
所属:医歯学総合研究科 国際離島医療学分野
「授業に対する心がけや創意工夫を行っている点などについてのコメント」

 

この度は、定年直前に思いかけず「ベストティーチャー賞」を頂くことになり、関係諸氏の方々に厚く御礼申しあげます。私が同賞を頂くことになったのは、医学科のディプロマ・ポリシーの中にある「基礎・臨床・社会医学における研究を体験し、研究の重要性と必要性を認識する」に関連する科目で、社会医学における領域に該当します。
離島で長年に渡り疫学研究を続けてきた縁で、研究を体験しながら学べる素晴らしい場が活用できます。今回、受賞対象となった「離島フィールドを活用して疫学研究を学ぶ」に対する特色や創意工夫を紹介します。

1.離島フィールド調査にスタッフとして参加し、フィールド調査や疫学研究の楽しさを体感
離島での調査では、大学院生とともに学部学生も会場の案内や動脈硬化測定など、住民と話ができる業務を担当してもらいます。動脈硬化測定に関しては、大学院生がチューターとなって調査前の大学での事前実習と現地での振り返りを繰り返し、測定結果の精度を担保します。学生が測定した結果も研究データとして使われれるため、学生の責任感も得られます。
調査期間は1~2週間のことが多く、離島で研究する疫学研究者の思いも伝えることができます。また、調査時における住民へのちょっとした気配りや対応など、講義や実習では学べないことも気軽に話せ、その直後に実践できます。

2.フィールド調査後のデータ解析
同コーホート研究に用いるベースラインのデータは2012年までに収集完了しています。学生が参加しているのはがんや循環器疾患の罹患情報収集と動脈硬化測定の追跡調査です。追跡調査が積み重なる毎に解析に使える情報量も増えます。こうして、屋根瓦式に学生らが集めたデータが蓄積されていく形になります。
これまでの蓄積データがあるため、調査後に直ちにデータ解析ができます。学部学生が限られた時間で解析を行う際にも、効率的に解析が行える体制が構築されています。
統計ソフトの使い始めのサポートは教員と上の学年の大学院生が担当します。調査体験とデータの共有により、学生と大学院生、教員のチームとしての一体感が得られており、屋根瓦方式の指導が有機的に機能しています。

3.学生のテーマと本研究との連携
学部学生が興味あるテーマで追加調査が必要な場合は、現研究の参加者に協力を仰ぎ、離島での追跡調査時に合わせて行うこともできます。年々、アウトカムデータの量が増え、質が高くなるとともに、学部学生が英文学術誌へ投稿できるレベルまで達し、2021年に最初の論文が受理されました。

4.本取り組みの継続性
私が定年後もこの離島での研究は引き継がれるため、今後とも「離島フィールドを活用して疫学研究を学ぶ」取組みの継続性は担保されます。

鹿児島大学
鹿児島大学医学部
鹿児島大学病院
附属施設等