鹿児島大学 医歯学教育開発センター

教員日誌医歯学だより

No.18 5周年

私が鹿児島に赴任し医歯学教育開発センターが稼働して5年となりました。これまで教職員、学生の多くのご支援をいただいてなんとかやってまいりました。心より感謝申し上げます。

医師を始めとする専門職は、実践の場「コミュニティ」で育成されると言われます。専門的な知識、技能をどのように活用して医師としての業務を遂行するのか、専門家とはどのような考え方をし、振る舞いをするのかを学ぶ場には、卓越した技能を発揮し、信頼される先輩がいます。その活躍、生活そのものをそばで見ながら、徐々に自分がその役割を担って専門家として行動できるようになる過程が人材育成です。正統的周辺参加、situated learningと言われ、医学教育においても重要性が強調されています。

教育を変えるということは、まさにこのコミュニティの常識、当たり前とされている実践とその指導方法を変えることを意味します。

新人は「黙って言われた通りのことをやる」⇒「自分の考えを述べる」

指導者は「できないことを叱責する」⇒「できたことを褒め、どのようにしたらできるようになるかを新人ひとりひとりと相談する」

それまで当たり前にやっている行動を変えるためには、まずは現状の教育に問題意識を持つことではないかと思います。学生や若い医師の学びたい気持ち、学ぶ喜び、できないジレンマ、自信と不安、希望と誇り、個性も全て理解しようとすると、どんなに良いと思われた教育も更に改善すべき点が見えてくるのではないでしょうか。教育という文化は多くの人と年月が作り上げたものですので変えることは容易いことではありませんが、良い教育をめざし続けようとする気持ちが学習者に伝わり、学習者が指導者となり、その「コミュニティ」に必ず変化が訪れます。5年経って、まだその変化を感じるまでには到っておりませんが、更に5年、10年経った時に学習者にとっての良い学びの文化が浸透していることを目指して、これからも地道に仕事を続けていきたいと思っております。

 

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