黄斑円孔 (おうはんえんこう)
六十五歳の母のことで相談します。

一年ほど前から眼鏡をかけていても見えにくくなり、最近急に視力が悪いと感じるようになりました。
眼科で眼底検査をしたところ、両眼とも白内障で、片眼は網膜に穴が開いた「黄斑円孔(えんこう)」と言われました。
白内障は手術でよくなるが、 穴が開いた方は三か月以上経過している場合手術しても視力は回復しないので、手術するかどうかは本人の意志に任せるということでした。手術はガスで穴をふさぐのだと聞きました。

黄斑円孔とは聞き慣れない病名ですが、具体的にどんな症状をたどるのか、失明することがあるのか、ガスで穴をふさぐ手術とはどんなものか教えて下さい。

黄斑円孔について教えてください。

網膜が張っている眼底の中心部を黄斑または黄斑部と呼び、眼底で最も大切な部分です。
もともと薄い場所なのですが、そこに1ミリメートルにも満たない非常に小さな穴があく、という病気が黄斑円孔です。
眼を強く打ったときにも起こる場合がありますが、高齢になって一種の老化現象で起こる場合がほとんどです。
黄斑部は視力をつかさどるところですから、その部分の網膜に穴があくと当然視力が悪くなります。

一気に穴があくというのではなく、まずは黄斑部の網膜がさらに薄くなり、何となく見 づらいとか、物がすっきり見えないとかいった症状がでてきます。
さらに、その網膜に小さな穴があき、それが拡大するにつれて視力もしだいに落ちてきます。個人差がありますが、1〜3か月で完全な穴になるようです。完全な穴になると視力は 0.1 位まで低下します。

お尋ねの場合は、眼のいわば老化が原因で起こった黄斑円孔です。

網膜の大切な部分になぜ穴があくのかはよくわかっていません。ごく稀に両眼に起こることもあります。


失明の恐れがあるのですか?

黄斑円孔がどんなにひどくなっても、失明する恐れはまったくありません。 黄斑部以外の網膜が悪くなることはないからです。


どのような治療をするのですか?

これまで治療の方法はありませんでした。ところが、最近になって手術によって穴を ふさぐ方法が発見されて、世界中で盛んに行われるようになりました。

近くの先生から説明されたように、眼の中をきれいに掃除した後、特殊なガスを入れる治療法です。つまり、眼球の中を特殊なガスで充満させるわけです。 そして、そのガスが黄斑部の穴の部分を押し付けるようにするために、手術後の約10日間、うつぶせの体位をできるだけとっていただきます。
手術そのものは30分位で済みますが、その後のうつぶせ体位が高齢の患者さんには負担になることがあります。
ガスは2週間位で吸収されて、順調にいけば問題の穴がふさがって視力もかなり回復します。

手術の成功率ですが、黄斑円孔を早く発見できれば非常に高い成功率を収めることができます。
一方、かなり時間がたっていても成功する例もありますので、専門医にさらに詳しい説明を 受けた上で、手術を受けるかどうか判断されるのがよいでしょう。


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