角膜混濁
九十歳になる母のことで相談します。

五年ほど前から目が見にくくなり、地元の眼科に通院してきました。軽い白内障と聞いていました。白内障であれば多くの人が手術をして良くなっているので、いずれ時期をみて手術をすれば良くなると思っていました。

しかし最近さらに見えにくくなったというので、付き添って診察してもらったところ、 「角膜片雲」ということで、手術をしても良くなる見込みはないと言われました。

この病気の原因・症状・治療法、良くなる可能性について教えてください。

角膜片雲とはどのような病気ですか?

角膜は眼球の表面にある厚さが0.5ミリくらいの割に硬い膜で、黒目と言われる部分にあたります。
角膜は光をうまく屈折するようにいつも透明になっています。 ところが、角膜に病気が起こると濁りを残すことがあります。 角膜に傷がついたり、角膜炎になったりしたあと、治りかたが不十分だと角膜に混濁が残ります。
角膜混濁の程度は様々であり、軽い場合を角膜片雲、重い場合を角膜白斑と呼んで区別します。
このような角膜片雲が角膜の中央にできると、眼の中に光が通りにくくなるだけでなく、 角膜がいびつになるために視力が悪くなるのです。

角膜片雲の原因はいろいろです。以前は栄養不良のために起こることがありましたが、近ごろは見られなくなりました。
よくあるのは異物が角膜に深くささったり、外傷によるものです。また、細菌やウイルスが感染して角膜炎を起こした場合もよくある原因です。
角膜の感染として、昔はトラコーマが大部分でしたが、最近は緑膿菌のような細菌、ヘルペスのようなウイルス、真菌とよばれるカビが原因となることが多くなりました。
また、外からの原因ではなくて、一種の老化現象として体質的に角膜に片雲が起こることもあります。


治療法はありますか?

角膜混濁の原因となった病気が治ると、混濁がきれいに消えて透明になったり、薄くなるのがふつうです。
ところが、病気が重くて混濁が濃く残ってしまうと、それ以上きれいになることはありません。角膜のまわりにあるときは視力は悪くなりませんが、中央部に残ると視力を低下させるのです。

このような濁りの治療ですが、薬物などできれいにすることはできません。ただ一つの有効な治療法は角膜移植です。
角膜移植とは、混濁した角膜を切り取って他人のきれいな角膜を移し替える方法ですが、角 膜の提供者が乏しいことが大きな問題です。


どうしたらよいでしょうか?

ご高齢なので、角膜片雲は一種の老化によるのかもしれません。

白内障との関係ですが、視力の悪いのが主として白内障のためであれば白内障の手術だけでもかなりの視力を回復することが期待できます。
白内障がごく軽いのに、角膜片雲のために視力が悪いのであれば白内障の手術をされても視力はあまり回復しないかもしれません。その場合は白内障手術と角膜移植を同時に行うのが理想ですが、角膜移植は角膜の提供者が少ないのですぐに行うことは困難です。
いずれにしても、角膜片雲や白内障の程度をもう一度よく調べてもらってから、判断されてはいかがでしょうか。


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