視神経乳頭、網膜神経線維の近視性変化の検討


研究題目:各種眼疾患における視神経乳頭、網膜神経線維の近視性変化の検討

共同研究機関:なし    

研究者等の氏名:感覚器センター(眼科) 教授 坂本泰二、助教 山下高明、園田祥三、医員 田中実、喜井裕哉

被験者の選定の方針及び症例数:20歳以上の緑内障、緑内障疑い、高眼圧症、視神経乳頭および網膜神経線維に異常のない患者150例

本研究、検査の意義、目的、方法及び期間:

意義 日本人は他の人種に比べて近視が多く、疫学調査である多治見スタディでは40歳以上の41.8%が近視であり、さらに近視は開放隅角緑内障の主な危険因子であったと報告されている。しかしながら近視では眼軸が延長し、視神経乳頭と網膜神経線維が引き伸ばされ、緑内障診断に重要な視神経乳頭と網膜神経線維の評価が難しくなる。そのため、臨床上は経験から近視による視神経乳頭と網膜神経線維の変化を勘案して緑内障の診断を行なっているが、緑内障専門医同士でさえも評価が分かれることも珍しくない。一方、近年の眼科検査機器の進歩により、視神経乳頭、網膜神経線維の近視性変化を数値化することが可能となってきた。なる。一方、近年の眼科検査機器の進歩により、視神経乳頭、網膜神経線維の形態を数値化することが可能となってきた。しかしながら、それらの数値は眼軸長による変化を反映しておらず、その関連性に関しては十分な検討がなされていないため、本研究が必要とされている。

目的:眼軸長と視神経乳頭の大きさ、形、傾き、位置および網膜神経線維の厚み、軌跡との相関関係を調査する。さらに、緑内障においてその相関関係を反映させた視神経乳頭および網膜神経線維の各種パラメータと視野感度の関係を調査する。

方法:20歳以上の緑内障、緑内障疑い、高眼圧症、視神経乳頭および網膜神経線維に異常のない患者に同意を得たうえで、身長、体重、眼科一般検査(視力、眼圧、角膜厚、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査)、超音波Aモードによる眼軸長測定、光干渉断層計およびconfocal scanning laser ophthalmoscopeによる視神経乳頭、網膜神経線維の検査、視野検査を行う。眼軸長と視神経乳頭の大きさ、形、傾き、位置および網膜神経線維の厚み、軌跡との相関関係を検討する。さらに、緑内障においてその相関関係を反映させた視神経乳頭および網膜神経線維の各種パラメータと視野感度の関係を調査する。検査データの一部をMoorfields eye hospitalと共同で解析する。その際送付されるデータは匿名であり、個人が特定されることはない。

期間:臨床研究承認日から統計学的に必要な150症例が集まるまで(予想では平成24年7月31日ごろ)

予想される効果と副作用又は被験者に及ぼす不利益及びそれに対する 対応

効果:近視による視神経乳頭、網膜神経線維の変化を調査することで、近視性の変化をより正確に勘案して視神経乳頭、網膜神経線維の評価を行うことができるようになり、緑内障診断に大きく寄与することが予想される。

副作用又は被験者に及ぼす不利益及びその対処法等:本研究で行なわれる検査は、全て眼科外来において通常行われるものであり、非侵襲的検査である。検査時に散瞳のために使用するミドリンP®点眼は、眼科外来で頻繁に行なわれる点眼であり、点眼後に瞳孔散大によるまぶしさや見えにくさを感じるが院内の生活に関しては問題なく、4〜5時間で元に戻る。狭隅角眼ではミドリンP®点眼により眼圧上昇の可能性はあるが、事前の細隙灯顕微鏡検査で狭隅角眼を検出することが可能で、そのような眼を持つ対象者を除外することで眼圧上昇を回避できる。解析センターに送付されるデータは匿名であり、不利益は無い。

当該研究に係る資金及び関係機関との関係:本研究で行なわれる検査および点眼は眼科患者に通常行われるものであり、資金に関しては特別なものは無い。共同研究機関であるMoorfields eye hospitalの解析センターに本研究の検査結果の一部を提供する。研究の目的は本研究と同様で、さらに人種間の差異についても検討する予定となっている。その際、解析センターに送付されるデータは匿名とする。

当該研究に参加することについて研究協力費の有無:なし。 検査のみであり、研究に無償で参加することを同意した患者が対象なので、特に必要ない。