ベストティーチャー最優秀賞

 

氏名: 網谷 真理恵
所属: 医歯学総合研究科 地域医療学分野

 

 この度は、令和7年度鹿児島大学医学部医学科ベストティーチャー最優秀賞という栄誉ある賞を賜り、心より光栄に存じます。

 私は地域医療学分野に所属し、心身医学のBio-Psycho-Socialモデルを土台に、地域医療のフィールドと医学教育の理論を組み合わせ、独自の教育を開発・実践してきました。地域医療に関連する科目では、初期地域医療実習、地域医療研究、離島・へき地医療実習、リーダーシップ科目、地域・総合・症候、プロフェッショナリズム・行動科学では、患者と医療、医療倫理、医療面接2、補完医療、を担当しています。これらを6年間のスパイラルモデルとして一貫して学べる教育を目指しています。

 地域医療の分野では様々な体験/滞在型実習を企画しています。これらの実習では、学生と共に離島・へき地へ同行・滞在し、時には農作業を共に体験しながら住民との交流を経験します。このような実習を共に体験することで、私自身も自分の価値観の見つめなおす機会となり、多くのことを学ぶ機会をいただきました。体験を通して個人の症状の背景にある家族・地域・文化の重なりを全人的に理解した医療を実践し、さらにシステム論的に読み解き課題解決できる人材、そして地域創生に貢献できる人材を育成したいと考えています。

 また、プロフェッショナリズム・行動科学教育ではコミュニケーション教育や医療倫理を通してコミュニケーションの技法だけでなく、医師患者関係の大切さ、問題解決の在り方を学ぶ機会としています。体験型教育の知見は、行動医学教育に関する学術的な発信にも結びついています。

 漢方教育にも力を入れており、「漢方薬を自分で選べるようになる」ことをアウトカムに、Problem-Based-Learningを軸として生薬・方剤の鑑別をゲーム形式で学べるカードワークや腹診シミュレーター、ロールプレイ、また独自の漢方OSCEを開発し、五感を通した学びを追求してきました。これらの実践は鹿児島をモデルとした全国FDにもつながり、鹿児島から漢方教育の標準化に貢献しています。

 これらの教育を通して素晴らしい人材が鹿児島大学から育ち医療に貢献できることを願っています。これからも学生を「教える」存在としてではなく、共に体験し、共に学ぶ伴走者として、鹿児島から発信し日本の医学教育に貢献してまいります。

 最後にここまで共に歩んでくださった学生の皆様、地域住民の皆様、実習にご協力いただいた実習施設の皆様、スタッフの皆様、ご指導いただきました多くの先生方に御礼申し上げます。ありがとうございました。
              

ベストティーチャー賞

 

氏名:大石 充
所属:医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学分野

 

 ベストティーチャー賞に選んでいただきありがとうございます。”教授“は「教えを授ける」ことが仕事ですので身に余る光栄に感じております。私自身が元々開業をして地域貢献をしたいという夢があって医学部に入ったことから、医学部生の皆様にも“人を診る”ことと“探求心”の両立をしてほしいと思って教育をしております。

 講義では循環器疾患を暗記するのではなく、生理学・解剖学・薬理学などの視点からメカニズムとして理解をしてもらうようにスライド構成を心掛けています。また、薬理学講義で「高齢者の薬物療法」一コマ担当させていただいており、高齢者の薬物動態というよりも、どのように高齢者と向き合うのかという視点で私が経験した多くの症例を交えながら話をしています。

 臨床教室ですので学生実習にも力を入れています。朝のカンファを重要視しています。数多くの生きた素材が提供されますが、学生さんには難しすぎて退屈なようで睡眠学習となってしまうことを多く目にしました。10年以上前から学生さんの隣に指導医を配置して症例提示を聞きながら解説を加えるようにしています。また、国試に出そうな典型的な画像の場合には司会者(病棟医長)などがプレゼンテーターに再度画像を提示してもらうことにしています。カンファの時間帯にも特殊治療や検査が組まれていることが多いので、指導医もそちらに行ってしまうこと多々あります。このような場合には残ったメンバーで複数の学生さんをカバーするようにしています。カンファ後には学生さんの聴診の勉強のためだけの“教授回診”をしています。だれでも聞き分けられる心雑音のみをターゲットとして聴診器の置く位置から患者さんへの接し方までを教えています。まず私が模範を示して学生さんに実際に聴診をしてもらいます。ただしポイントや解説は学生さんの聴診が終わった後に行って、“失敗から学ぶ”ことも重要視しています。最終日には試問を行っています。試問形式にしていますが、実際は基本事項の確認です。私がベラベラとしゃべった方が楽でしょうが、“試問”にした方が頭に残るかなと思って続けてきます。初日のオリエンテーションの時に「試問では患者さんの持っているすべての病気について聞きます」と言ってあります。学生さんのころは「なんでも診られる医師になりたい」という人が多いのですが、医師になると専門の“疾患”しか診ない医師になってしまうことが多いようです。そうならないためにも大動脈弁狭窄症の患者さんの試問で、糖尿病薬の薬理学的作用や睡眠薬の使い方、食道癌の術式などを聞いたこともあります。
これまでは自分の体験に基づいた教育を心掛けてきました。残り少ない教育者人生ですが、この賞を励みにして更なる高みを目指したいと思います。

 

氏名:原口 みさ子
所属:医歯学総合研究科 生化学・分子生物学分野

 

 この度は令和7年度のベストティーチャー賞に選んでいただきまして誠にありがとうございます。大変光栄なことと思っております。推薦してくださった学生の皆様、選出してくださった先生方に深くお礼を申し上げます。
離島で長年に渡り疫学研究を続けてきた縁で、研究を体験しながら学べる素晴らしい場が活用できます。今回、受賞対象となった「離島フィールドを活用して疫学研究を学ぶ」に対する特色や創意工夫を紹介します。

教育・学習方法の工夫について

 1年生の生化学の講義で糖代謝、核酸代謝を担当しています。 解糖系、TCA回路など重要ですがあまり面白くない部分です。90分集中して聞くのは困難だろうと思います。一方糖代謝の概要を最初に理解し記憶しておくと代謝の調節機構や他の代謝系の理解が容易になります。そこで講義中に15分ほど時間を与え解糖系、TCA回路などを何回か紙に書いて記憶してもらうことにしました。講義の最後にその紙を回収し出席とします。記憶するという能動的な行動をすることにより後半の講義も覚醒した状態で聞いてくれるように思います。試験に出すと大部分の学生が正解します。もちろんこれは生化学の進級判定が厳しく学生が真剣に講義や試験を受けてくれるからできることですが。講義では記憶より考える力を養成するよう求められていますが試験時にAIの使用が認められていない現在は記憶することも必要ではないかと思います。記憶したことを将来少しでも役に立ててもらえると嬉しいです。

 

氏名:見附 明彦
所属:医歯学総合研究科 泌尿器科学分野

 

 このたびは、ベストティーチャー賞という大変光栄な賞をいただき、誠にありがとうございます。

  日々の講義や実習の中で私が大切にしているのは、学生の皆さんが単に知識を覚えるだけでなく、「なぜそう考えるのか」「自分ならどう判断するか」を考える機会を持つことです。臨床の現場では、教科書に明確な答えが載っていない状況にしばしば直面します。そのような場面でも、患者さんにとって少しでもよい選択は何かを考え続ける力を、学生のうちから育んでほしいと考えています。

 特に泌尿器科の診療では、手術、がん治療、腎不全外科、腎移植、透析医療など、幅広い領域が密接に関わっています。腎移植ひとつをとっても、医学的な知識や手技だけでなく、献腎移植の制度、臓器提供、患者さんやご家族の意思決定、社会全体で支える仕組みなど、多くの要素が関係しています。医療は病院の中だけで完結するものではなく、社会システムとも深く結びついていることを、学生の皆さんにも感じてもらえればと思っています。 講義では、できるだけ実際の臨床に近い症例や問いを提示し、学生同士で考えたり、意見を交わしたりする時間を大切にしています。正解をすぐに示すのではなく、迷いながら考える過程そのものが、将来医師として患者さんと向き合う力につながると考えているからです。

 今後も、学生の皆さんが手術や医療により興味を持ち、受け身ではなく主体的に学ぶきっかけとなるような講義を心がけていきたいと思います。そして、医療の面白さ、難しさ、責任の重さ、そしてやりがいを少しでも伝えられるよう努めてまいります。 最後になりますが、今回の受賞は、日頃からご指導いただいている先生方、講義や実習に協力してくださる医局の皆様、そして真剣に学んでくれる学生の皆さんのおかげです。心より感謝申し上げます。ありがとうございました。