鹿児島大学医学部産科婦人科学教室

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子宮頚癌とHPVワクチン


子宮頚癌は予防できる病気になりました。
ワクチン接種目的に受診される場合は、別途の初診料は必要ありません。
当科では2価ワクチン、4価ワクチンともに採用し、接種しております。

子宮頚癌とヒトパピローマウイルス

 ドイツのHarald zur Hausen博士は、2008年のノーベル医学生理学賞受賞者の一人です。博士は子宮頚癌の組織からあるウイルスのDNAを見つけました。それがヒトパピローマウイルス(HPV)です。1983年のことです。
 子宮頚癌は「多産婦に多い」、「初交年齢の若い人に多い」、「売春婦に多い」などの疫学的な事実から、かなり古くから性感染症だろうと推察されていました。いくつかの候補が挙がる中でHPVが見つかったのです。1980年代以降HPVと頚癌の関連性について多くの研究がなされ、子宮頚癌の99%である種のHPVが見つかるという事実から、それが子宮頚癌の原因だろうと考えられるようになってきました。HPVは種類が沢山あって、現在では約100種類が見つかっています。どれもが癌の原因になるわけではなく、特定の15種類ほどが子宮頚癌から見つかります。世界的にみると、地域によって見つかるHPVの種類は微妙に異なります。しかし、最も高頻度に見つかるのはHPV16とHPV18で、これはどの地域でも共通です。この二つのタイプのHPVが子宮頚癌の約70%の原因と考えられています。
 HPVは性行為で感染します。現在では、HPV感染は淋病やクラミジア感染を抜いて、最も頻度の高い性感染症だと考えられています。性行為によって伝播されることは間違いありませんが、梅毒や淋病のようないわゆる"性病"とは異なり、特に20代女性では不顕性感染が決して少なくなく、そのほとんどが一過性であることも知られています。今では女性の80%は生涯に一度はHPVに感染すると考えられています。HPV感染自体は非常にありふれた感染であり、そのごく一部(0.1%程度)が癌に進行するわけです。ほとんどの人では自然に感染が排除されるのに、なぜ一部の人に持続感染が成立するのかについては不明です。HPVが感染してもいきなり癌になるわけではありません。異形成もしくはCINという前癌病変を経て、その一部が癌までなります。

子宮頚癌とは

 子宮頚癌は女性特有の癌としては乳癌に次いで2番目に多い癌です。子宮の中でも頚部と呼ばれる膣に違い部位に発生します。胎児のお部屋となる子宮体部にできる子宮体癌も同じ子宮にできる癌ですが、全く別の癌です。日本では年間に約1500人が新たに罹患し、約3500人が死亡します。特に20代、30代の女性においては急増傾向です。生殖器の癌ですので、若い女性が死亡するもしくは妊娠・分娩の機会を無くす可能性のある社会的な影響が大きい疾患でもあります。
 世界的に見ると、アフリカ、中南米、中央アジアなどの発展途上国での発生率が高く、検診システムの整った先進国では発生率・死亡率ともに低くなっています。

子宮癌検診

 子宮癌検診は最も歴史のある検診方法で、膣鏡を膣に挿入して展開し子宮膣部を綿棒などで擦って細胞を採取する細胞診という方法で行われています。1960年代から40年間の頚癌発生率・死亡率の半減にこの検診が大きく貢献したことは間違いありません。
 しかし、最近では検診の受診率は欧米諸国と比べてもずっと低率になってしまっており、若年層では発生率はむしろ増加傾向になっているといわれています。
 検診では、頚癌だけではなく、その前癌病変である異形成も見つけることができます。異形成の段階であれば、自然に治癒することもありますし、程度が悪くても子宮の温存は可能です。

HPVワクチン

 子宮頚癌はその原因がはっきりしていますので、HPVの感染を防ぐことができれば、その後に起こる発癌を防ぐことができるはずです。
 HPVは二本鎖DNAがカプシドと呼ばれるたんぱく質の殻で覆われた構造をしています。このひとつであるL1たんぱく質の殻だけ(ウイルス様粒子=VLPと呼びます)を抗原として注射すると、これに対する抗体が誘導されます。この抗体が中和抗体として、HPV感染を防ぐ役割をするのです。ワクチンは2社から発売されていますが、日本で2009年12月に発売になったHPVワクチンは、HPV16とHPV18のVLPに免疫増強剤であるアジュバントが添加されています。
 もうひとつのワクチンは、HPV6/11に対するVLPも含んでいます。HPV6/11は癌の原因とはなりませんが、尖圭コンジローマという性器のいぼの原因で、これも防ぐことができます。投与は3回三角筋に筋注します。効果期間は20年間は持続するだろうと考えられています。
 ワクチンの効果はHPV持続感染とCIN2/3という前癌病変(異形成と同等)の発症予防効果としてみます。臨床試験では、性交未経験者を対象とした場合、HPV16/18の持続感染とCIN2/3、AIS(上皮内腺癌)発生に関して100%近い予防効果があることが確認されています。すなわち性交がまだない時期にワクチンを接種すれば、HPV16/18が原因となる前癌病変は防げる、当然それに次いで発生する癌が予防できるだろうということになります。しかし、性交経験のある人まで含んだ場合では、その効果は半分ほどに下がってしまいます。
 副作用は一般的な予防接種と変わりません。重篤な副作用の報告はありません。アジュバントによる反応が主で、発熱、かゆみ、吐気、接種部の発赤、腫脹などです。筋肉注射ですので、筋肉痛がわりと多いです。
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